真相~頭取交代劇の延長線上にある北九州銀行
1.頭取交代劇の事情に詳しい地元経済人が語る人間模様
(1)守旧派8名のうち、従業員組合の委員長・副委員長と書記長の7名がもうひとりの対案賛同者の福田浩一氏を頭取にする構図となっている。つまり決算役員会における役員選任人事は、平取締役であろうが代表取締役であろうが全員1票であり、それを知った上で、過半数を制する8名に対案を提出させる力を持った人物こそ田中相談役であったという。田中相談役は日立製作所から組合対策のために山口銀行に入行しており、いわば御用組合の生みの親でもある。組合出身の7名を役員に引き上げ、今回のクーデターに賛同させた田中相談役の人身掌握術は見事としか言いようがない。
(2)田原頭取の推薦によって役員に昇格した野坂文雄氏は取締役福岡支店長であったが、その年2005年3月頃から活発化したクーデターへの参加を複数の組合出身役員から打診され、8人目の対案賛同者となったと言われている。
心の葛藤もあったのだろうか。また、良心の呵責に苛まれる日々が続いたのか。毎晩博多の夜の街へ部下を連れて繰り出していたと言われている。しかし参加を決断してからは4人の書記長経験者(末廣、滝本,加藤、野坂と続く)は結束し、クーデター成功の足場を確固たるものにした。その功績を買われて、野坂氏はもみじ銀行頭取、今回加藤氏が北九州銀行の頭取に就任する。
先述したクーデター派の取締役3名(当時)が山口FG傘下の山口銀行・もみじ銀行・北九州銀行の頭取となる。
北九州銀行頭取となった加藤俊雄取締役(当時)は、04年5月21日の山口銀行臨時取締役会の席上、田原鐵之助頭取(当時)を罷免する立場から「様々な事件・事故があり、行内のムードが沈滞している。現状はサッカーでたとえるならば警告が多く、プレーする選手がいない状況であり、新体制でスタートするために再任は反対」と発言。
加藤氏が言う様々な事件とは、田中頭取時代に行員による顧客預金の横領事件が田原氏の頭取の時に発覚したことや情報漏洩事件などを指すもの。加藤氏も役員の一人であり経営責任の一端を負う立場もわきまえず、田原頭取個人を中傷する大義なき立場を述べたと言われている。
頭取個人の不祥事や経営トップとしての資質に大きな欠陥があるのであれば罷免は仕方がないが、真剣に銀行経営に取り組んでいた田原頭取の罷免に賛成した加藤氏は、北九州銀行の頭取に就任した今、業績次第では経営責任が問われる本来の「罷免」を
味わうことになる。
2.もみじ銀行救済(クーデターの代償)のために山口FG誕生
山口銀行の頭取交代劇に金融当局は激怒したと言われている。しかし金融当局にとって好都合な事態となる。経営危機に陥っていた「もみじ銀行」の救済を山口銀行に引き受けさせることであった。要は「頭取交代を安堵する代わりにもみじ銀行の救済」を提案した。渡りに船の山口銀行は翌年3月18日の臨時取締役会の承認を得て、「もみじ銀行との経営統合を前提とした業務資本提携」を発表。
06年10月1日に、山口銀行、もみじ銀行を傘下に持つ山口FGを設立している。今回の「北九州銀行」設立は「もみじ銀行」の救済と同様、他業態の金融機関の救済の受け皿として当局の指示を受けて新設したものではないかと見られている。
合併による金融再編が進むなか、時代に逆流する新銀行の新設は頭取交代劇の延長線上の出来事と無縁ではない。いよいよ、きょう(10月3日)に北九州銀行がスタートする。
(了)
【北山 譲】
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