福岡市南区で独自の技術を施したスプリンクラーを開発・販売している水道防災協同組合が、9月29日付で(株)水防協へ組織変更した。同組合は、2006年12月、福岡県を中心とした15の水道工事・電気工事業者の出資にて発足。発足5年目の節目となる今年、法人化することで、全国に、大々的に販売に打って出る。
「従来の組合組織では、様々な制約がありました。組合は利益を出せない組織であるため、発足から数年間はまったく利益を出せず、加盟する企業も、このご時世であるため、組合に出資を続ける事が困難になりました。1社抜ければ、また1社抜け、組合自体の存亡の危機に直面しました。そこで、組合組織を改め、法人化することにより、全国的に、大々的にPRに売って出ようと考えました」と話すのは、同社の初代社長である吉崎幸一氏だ。吉崎氏の考えでは、全国で5社~10社ほど代理店契約を結び、その代理店が特約店を作る。特約店は、約500社を目標にしている。水防協主催の講習会を受講させた上で、ハウスメーカーや10階建て以下のマンション、集合住宅、医療機関や老人介護施設などに商品を売り出したい考えだ。
<既成概念を覆すスプリンクラーシステム>
では、水防協の看板商品であるスプリンクラーシステムとはどのようなものか?日本消防検定協会の性能鑑定を取得し、すでに特許を出願しているこのシステムは、消化タンク、加圧ポンプが不要な「乾式」といわれるもので、従来の水道設備を使用しているのが特長だ。
例えば、火災が起きた際、室内温度が60度に達すると、まず煙感知器が煙を感知し、各部屋に警報を伝える。そして、感知器が電動弁制御盤に情報を即座に伝え、三方弁が従来の生活用水の水流を同システム向けに変換、室内温度が72度に達した部屋に即座散水する。警報のみならず、散水も火災発生後、20秒以内で行なわれるというものだ。なお、室内温度が72度に達していない部屋に関しては散水はなされず、火災の箇所のみを散水する、という優れた機能を有する。この水道連結型スプリンクラーシステムが特許出願中だ。
<従来は数千万円の費用も20分の1程度に>
コスト面や性能面で、従来の「湿式」よりも多くの面でメリットを有する。従来の「湿式」は、タンク、加圧ポンプを要するほか、屋内のスプリンクラー配管内に常時水が満たされている方式。常時水が満たされているので、凍結、結露、漏水、流水音、停滞水(死水)といったデメリットがある。一方、水防協の「乾式」は水道に直接連結されており火災発生時に防災弁ユニットから即座に水を通す。また、タンク不要で配管の設計が単純で配管の圧力損失や口径が小さい。また、制御盤と電動弁・警報ブザーを一体化したほか、テスト装置と点検機能もユニット内に装備することで、日常・法定点検を簡素化することが可能になった。このため、維持管理のコストの大幅な削減につながった。従来型は、施設によっては、高くて1000万円の費用がかかるが、これは50万円~70万円の投資で設置が可能となる。費用が従来型の約20分の1というのは、魅力的である。
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