≪グループ会社≫
東電は子会社166社と関連会社98社を傘下に従えるが、委員会は、このうち電力事業との関係性が深く、自社保有の必然性のあるものを売却対象から除外し、さらに今後成長が見込める分野は東電の企業価値を高め、国民負担を軽減するととらえ、売却対象から除外した。こうした分類によって46 社を売却して1,301億円を捻出し、さらにそれとは別に8社を清算するよう結論づけた。
一部のグループ会社の業務(651人)は東電に吸収することにし、事故収束に深く関与するグループ企業は売却を見送った。さらに、類似業務の子会社は、合併を促し、最終的には傘下に残る企業は64社にする。これにともないグループ会社の人員は1万6,261人から1万1,172人に減少する。
委員会は不動産、株式、グループ会社の売却によって7,074億円がひねり出せると試算している。
以上、見てきた委員会報告のリストラ案には、東電の本業である電力事業に関するもの――本店本館や別館ビル、各地の発電所、発電業務に関するグループ会社――の売却には踏み込まず、発電と送電の分離に道を開きかねない事柄には慎重に言及を避けている。新聞各紙も、そうした点と金融機関の債権放棄や株主への減資が行なわれない点をとらえて、委員会報告を論難する傾向が強い。たしかに、そうした政策・制度的な改革を促さず、法的もしくは私的な整理的手法を介さない点では、甘さは否めないものの、少なくとも、東電王国で働く従業員にとっては過酷な内容と言えるだろう。
賞与半減を含む年収20%減が10年も続くとあれば、20代から30代前半の若手の有為な人材や、転職にそれほど抵抗感がない女性社員ほど、辞めたくなるだろう。一方で50歳以上の定年が間近な人ほど、現行の割り増し退職金制度があるうちに退職しようという誘惑に駆られる。とりわけ北関東や千葉、山梨、静岡などの地元採用組には、夫婦共働きであったり、田畑など不動産を所有したりする人が少なくなく、地方採用の中高年ほど、東電脱出の機会をうかがいそうだ。
そうなると残るのは、子持ち、ローン持ちの30代後半から40代のミドルたちばかりになりそうだ。たいていが千葉や神奈川、埼玉にマイホームを抱え、2、3人の子どもがいる一番カネがかかる世代だ(転職がしにくい世代でもある)。労働条件が悪化する彼らには、被災者の賠償業務という過酷な仕事が待っている。
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