福岡市における入札業務が、過去26年間、明文化されていない慣例によって行なわれてきた実態を福岡市の調査報道サイト「HUNTER」が明らかにした。
同市では、「福岡市事務分掌条例」および「福岡市事務分掌規則」に、契約事務を『財政局契約課』(以下、契約課)の所掌であると定めているが、実際は、入札される事業を担当する部署(以下、原課)が実施するケースがあり、この特例については一切明文化されたものが存在していなかったのである。
財政局財政部長は、NET-IBの取材に対し、1985年の市内部の取り決め以来、不文律の慣例として行なわれ続けてきたことを認めたうえで、「何らかのかたちで明文化する必要がある」との見解を示した。
この慣例の存在が浮上したのは、調査報道サイト「HUNTER」が、同市東区で建設予定の新青果市場の基本設計における入札業務を、原課である市新青果市場担当が所掌していたことに対し、疑問を投げかけたことがきっかけ。同入札結果は、担当したのが財政局契約課ではないという理由で、市議会第3委員会で報告されたほか、いわゆる一般市民には公表されていないという。
2001年に施行された「福岡市契約及び検査に係る事務分掌の特例に関する規則」では、特例として「設計」を含む「地質調査、測量等の委託契約で予定価格が10万円を超えるもの」については契約課が担当することと定められている。つまり、予定価格が約6,500万円であった新青果市場の「基本設計」の入札業務について新青果市場担当が行なうこと自体が、規則違反ではないのかとの疑問が生じる。
この点に関して、財政部長は、「基本設計」は同規則にある「地質調査、測量等」の「等」に含まれていないと説明。また、明文化されていない慣例で原課が入札業務を行なったことは市内部の問題であるとして、外部(落札者)への有効性を主張した。
一方、福岡市議からは「本来、事業に精通している原課が行なう取り決めには合理的理由があったのかもしれないが、何度も同じようなところが落札している状況を見る限り、癒着が進むという可能性は否定できない」との指摘があった。また、同市議は、何も根拠がない状況で行政事務を行なっていたことや契約課担当ではない理由で入札結果を公表しないという姿勢に対して、「根本的に間違っている。市民からの預り金である税金に対する意識が低い。ゆるんでいる」と、語気を荒げた。
入札業務のあり方についてはさらなる議論が必要だが、明文化されていない慣例に基づいて行政事務が行なわれていた現状は、言い換えると、解釈次第でどうにでもなり、場合によっては市職員によって実施要領が異なるということにもなり得る。とくに入札という公金(税金)が関わる業務については、不正を防止するためにも、きちんと条例・規則などで整理しておくのが当然なのではないだろうか――。
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