中国電力の実質的な筆頭株主である山口県は、外郭団体の「山口県振興財団」(山口市、西村亘理事長)が、保有する4,950万株(13.3%)の半分強にあたる2,750万株を売却する方針を固めたと一部の報道機関が伝えている。
9月25日、原発新設計画のある自治体としては初の首長選挙である上関町長選挙が行なわれ、原発推進派の柏原重海氏が反対派で新人の前町議・山戸貞夫氏を破り3選を果たしたものの、再選を果たした柏原氏も原発推進の立場から、「原発なき後の町づくり」に態度を変化させている。
山口県の二井知事は、中国電力が上関町で建設を計画していた「上関原発」着工に前向きであったが、3月11日の福島原発の事故を受けて慎重姿勢に変わってきていた。
菅直人前首相の後を受けた野田佳彦首相も新規原発建設に否定的なため、上関原発計画は宙に浮いたままとなっている。九州電力と古川康佐賀県知事との「やらせメール」事件などもあり、再稼働さえ厳しい状況のなか、原発新設計画は中止となる公算が高いと見られている。
今回、山口県が「山口県振興財団」を通じて中国電力の株式売却を決断したのは、(1)上関原発の見通しが立たないため資本関係を見直す。(2)山口県は景気の低迷や少子高齢化による税収の落ち込みで財政状況が厳しく、資産売却や人件費の削減が急務となっている。(3)振興財団は、国の公益法人制度改革により来年3月に解散する予定で、株式売却益の確保ならびに借入金の返済に充当できる。以上、3点が大きな理由と見られている。
なお、残った2,200万株は県が引き継ぐ見通しであるが、県が直接保有すると配当金課税がなくなるメリットもある。
株式の売却先については、地元の山口FG
、みずほコーポレート銀行、広島銀行などに打診しており、10月中にも引受先が決まるとしている。
筆頭株主の山口県が中国電力の株式売却に踏み切れば、電力会社の株を大量に保有している他の自治体も財政難から追従する可能性があり、低迷する電力株のみならず株式相場にも悪影響がおよぶのではないか、と見られている。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら