福岡市東区のアイランドシティの将来について、有識者や住民代表らが語り合う「アイランドシティ未来フォーラム」の第4回が、10月8日、福岡市役所15階講堂で開催された。
同フォーラムには、東京大学大学院教授の出口敦委員長以下、委員16名に経済人、文化人や警察署長が参加。まちづくりを話し合うにはなかなかの顔ぶれと言える。ただし今回は、本シリーズの記念すべき第1回で指摘した"あの人"の姿は見えなかったが―。
第4回は委員によるフリーディスカッションが行なわれたが、それに先立ち、山崎一樹副市長が自ら福岡市の財政状況と市全体の都市計画などについて説明を行なった。
そのなかで、全国の政令市で2番目に高い約2兆5,000億円の市債残高、ピーク時は約428億円あった港湾整備事業基金の残高が2010年末で約44億円に減少していることなど、『財政面の厳しい現実』が呈示されたのである。
市民にとってはお先真っ暗な話を聞いた直後に、「さあ、自由奔放なまちづくりの討議をしよう!」というわけにはいかない。福岡市の財源のみをあてにせず、アイランドシティ独自で土地分譲による資金を得て、それをまちづくりに活かし、さらに人や企業などを呼び込むサイクルが必要と言いたいのだろうが...。
結局は、「中核となる施設がなければ土地は売れない」(施設を作るためには金が必要)といった意見も出て、ディスカッションには閉塞感さえ漂い始めた。
お世辞にも順風満帆に進んでいるとは言い難いアイランドシティ事業は、存在そのものが「福岡市の負の遺産」とさえ言われている。前市長は、「私の頭のなかの8割は、アイランドシティの土地売却である」という迷言を残した。できない理由を並べるのは、至極簡単なことなのは言うまでもない。意図的なものかどうかはともかく、山崎副市長のプレゼンテーションは、委員らの自由闊達な討議を封じ込めた効果があったと言えよう。
不気味にすら思えるのは、プレゼンの内容(資料)のなかに、「公共施設の大量更新期の到来」の説明が含まれている点だ。「老朽化した建物はアイランドシティで移転新築」は、移転をめぐり紛糾している福岡市立こども病院にも当てはまる考え方だ。同フォーラム設置目的には「アイランドシティ整備事業に対する市民や企業などの理解、共感を得る」とあるが、市側による意見の誘導が行なわれていないかと疑念を抱く。
市HPで特設コーナーを作るなど大々的にPRが行なわれた「こども病院移転計画調査委員会」に比べ、開催告知などは控えめ。一般傍聴者も指で数えるほどで、あえて目立たないようにひっそりと行なわれている感じもするのではあるが...。
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