<現地の治安状態に対応できない武器使用基準>
国連は今年(2011年)7月、1月から6月にかけて南スーダンで起きた衝突により約2,400人が死亡したと発表した。CNNは同じく8月、同国東部の民族衝突で「約600人が死亡、750人以上が負傷した」と報じた。
10月2日、南スーダンへ施設科部隊を派遣するため、現地を訪れていた外務、防衛両省などで構成する日本政府の調査団が帰国した。調査団のメンバーのひとりは記者に対し、「現地は平穏で、所期の目的を果たすことができた」と述べた。
しかし、調査団は首都・ジュバに2、3日滞在しただけで、物資の補給ルートや戦闘が激化している国境地帯の調査は不十分なままである。
調査団は現地の安全性を強調しているが、自衛隊員の安全を考えれば、武器使用基準の見直しは絶対に避けては通れない問題である。今回、陸上自衛隊は必要な機材や物資をケニアのモンバサに陸揚し、陸路千数百キロを輸送することを検討している。途中には、戦闘が激化している国境地帯もあり、危険と隣り合わせだ。
だが、輸送業務には、武器使用が認められていないため、人員や物資の輸送が妨害されても、警告射撃さえできず、迂回するしかない。
襲撃された住民の救助、殺傷・破壊行為に関与している者の身体の一時拘束、不審車両の発見などを目的とした検問などの実施、襲撃された他国部隊の救援にも武器使用が認められていない。これでは他国部隊との連携や効率的な部隊活動は困難。持てる能力を発揮するどころか、足手まといになり、日本への信頼を失墜させかねない。
派遣準備には約3カ月を要するため、正式派遣は年明けになることは確実である。それまでの間にPKO参加5原則の見直しを行なうことが、野田首相が派遣を決定するための最低条件である。
<PKF派遣への備えは大丈夫か>
2001年(平成13年)の国会で、PKO協力法の一部が改正され、国連平和維持軍(PKF)の本体業務への参加凍結が解除された。これまで一度も日本はPKFに派遣してこなかったが、今後国連から要請があった場合にどうするのか。PKF本体業務に参加した場合の武器使用基準については、未だに曖昧なままだ。もういい加減、先送りとその場しのぎの対応から脱却するべきである。
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