福岡市立こども病院や青果市場の移転において、入札の経緯や事業者の選定などで、また新たな疑惑が生じているアイランドシティ(人工島、以下「IC」)。ついには「福岡市の呪われた遺産」という声も関係者から聞こえ始めた。
2010年11月の福岡市長選挙で1期4年の短命政権にピリオドが打たれた前市長・吉田宏氏は、自身が06年の初当選時に公約にかかげた「福岡市立こども病院の人工島移転見直し」が命取りとなった。
吉田氏が市長就任後に設置したIC事業検証・検討チームは、同事業を推進していた つる川前副市長(※1)以下、総務企画局、財政局で構成された。当然ながら、移転見直しの意見は出ず。「移転反対」を公言したこともある吉田前市長は、2期目の選挙で「公約違反」という重たい十字架を背負うこととなった。
その吉田前市長を破り、初当選を決めた高島宗一郎市長だが、就任後、公言していた通り、「こども病院移転計画調査委員会」(委員長:北川正恭 早稲田大学院教授)を設置。同病院患者家族代表や抽選で選ばれた2名の市民も委員として参加し、「不透明なプロセス」の検証が行なわれた。同調査委では、他候補地への移転計画案の比較・検討も行なわれたが、今思えば『IC移転を正当化するための儀式』であった。
IC事業は今、何ら根拠のない慣例によって行なわれた入札がまかり通り、またしても「不透明なプロセス」によって推進されようとしている。反対する患者家族の涙の訴えもむなしく、移転が決まった新こども病院においては、PFI方式の中身そのものに疑問符がついている。
しかし、先日(8日)に行なわれたIC未来フォーラム第4回で最も気になったのは、高島市長の姿が見えないことだった。部下を信頼し、現場を任せることはリーダーにとって大事なことではあるけれども、ICは市長の命取りともなる市政の重要項目のひとつである。中途半端な姿勢で臨んで前市長の轍を踏むことはないように、同事業に関しては最後まで陣頭指揮をとるべきなのではないだろうか。
※1「つる川」の「つる」は雨冠に隹と鳥。
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