<駆け引きは苦手?>
須崎ふ頭への日清製粉(株)誘致について、寄せられた疑問を提議したい。まず、「工場自体はオートメーション化されており、人員は極力少なくてすむ」という声がある。24時間の3交代制でも多くの人員は必要なく、「雇用促進」の点では大きな期待はずれになるという。
次に、「日清製粉は、九州地区からの撤退をちらつかせて、須崎ふ頭の誘致を引き出しているのではないか」との意見もある。同社が、九州地区の生産拠点である筑紫野工場や鳥栖工場を統合集約せず撤退のみを行なう場合、同社の生産拠点の西端は岡山市となり、同市から九州地区へ輸送することになる。その場合、現在よりかなりのロスが生じ、現実的ではないとの見方だ。また、そう考えると、『九州地区からの完全撤退』は、交渉における駆け引きの材料として使えるものではない。
この誘致活動に関しては日清製粉の圧勝と言える。売却する側と購入する側が対等に交渉した様子はなく、どうしても誘致したいという下心を見透かされていたのではないだろうか。要するに、福岡市役所は"百戦錬磨の優良企業"に足元を見られていたのである。
市は、日清製粉に対して「相応しい環境に長期にわたり維持していきます」と、明言した。日清製粉も100億円とも言われる資金を投じて工場建設する以上、長きにわたり須崎ふ頭での操業が行なわれることになるだろう。福岡市は、須崎ふ頭の大規模な再開発を「すでにあきらめた」のではないだろうか。一方で、同ふ頭には再開発に期待を持つ地権者も少なくはない。疑念うずまく今回の誘致話。福岡市は、同ふ頭についてのビジョンを明確に打ち出す必要があるように感じる。
(了)
【道山 憲一】
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