<M&A、過去5年で16件>
(株)データマックスの調べによると、九州流通業界のM&Aは、06年からの過去5年間だけで16件にのぼる。企業別に最も件数の多いのは、マミーズの4件。同社自体が親会社だった福岡県魚市場(株)がオレンジチェーン本部を買収して設立された会社。04年9月傘下に収めた三池商事を含めると、03年の会社設立以来、(有)千歳屋、(株)日の出屋、昨年の(株)福岡大洋フードセンター、(株)トーホーストア(福岡)と計5件のM&Aを実行した。04年3月期の売上高は43億円だったが、前期は174億円と7年間で4倍に拡大した。
M&Aが最も多かったのが06年で、西鉄によるスピナ、石原商事による(株)おおうち、(株)なかの、マミーズの千歳屋、ハローデイのボンラパスと5件あった。その後も09年を除き年2件のペースで続いている。今年4月には、エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング(株)がオレンジライフを展開する(株)エブリデイ・ドット・コムを評論家・大前研一氏とそのグループ会社から買収し、完全子会社化した。H2Oは傘下の阪急キッチンエールを通じて関西、首都圏で宅配事業を展開しており、九州をこれらに次ぐ拠点に育成する。
企業買収以外に、破綻企業の店舗を継承するケースもある。08年、筑後の(株)タイホーから6店を買収したマックスバリュ九州と、09年秋西原食品から従業員を含め6店を譲り受けた(株)ハイマートの場合がそうで、事実上のM&Aと言える。ハイマートは2000年6月、(株)ミートインハイマートがSMに進出するため設立。居抜き出店を活用し、11年4月期の売上高94億円と、設立11年で100億円に王手をかけるまでになった。
<「救済型」増える>
2000年代に入りM&Aが活発化した背景には、右肩上がりの成長が終わり、企業間競争が激化してきたことがある。経営不振に陥ったり破綻する企業が増える一方で、経営は存続していても将来に見切りを付けるオーナー経営者も出てきた。
本誌の調べによると、02年12月のオレンジグループの破綻以降、主な倒産(民事再生法または会社更生法適用申請、自己破産、事業停止)だけで12件。倒産までには至らなかったものの、廃業(タイホー)や事業再生ADR申請(丸和・ユアーズ)といったケースも含めるとさらに増える(別表参照)。
これら企業を、業績が比較的好調で一挙に店舗網を拡張したい企業が救済するかたちで買収するケースが、M&Aの主流を占める。代表例が、(株)ユアーズによる丸和の買収。石原商事のおおうち、なかののM&Aや、マミーズの千歳屋、日の出屋、福岡大洋フードの買収もこれに当たる。
07年4月、イズミが子会社化した(株)ゆうあいマートの場合は、経営不振のゆうあいマートを救済することで、SMを持たないイズミが中部九州に拠点となる会社を確保する狙いだった。もともと、イズミはニコニコ堂の大型店を継承する見返りに、同社の小型店を引き継いで発足したゆうあいマートになかば付き合いで25%を出資していた。大型商業施設の開設が難しくなったことから、新規事業としてSMに着目。社長を送り込み、本腰を入れて事業拡大を図ることにした。
企業同士の思惑が一致し商品のように企業を売買する「相思相愛型」もある。西鉄によるスピナ、ハローデイによるボンラパスのケースだ。スピナの場合は、周辺事業の整理を進める新日本製鐵と、北九州地区の店舗網が手薄な西鉄の利害が共通した。ボンラパスは、デベロッパー事業に集中したい福岡地所と、福岡都心部の店舗を強化したいハローデイの思惑が一致した。マミーズと三池鉱山子会社・三池商事もこのケース。
オーナー経営者が将来に見切りを付けたのが、ミドリ薬品と廃業したタイホー。ミドリ薬品の創業一族は保有株をマツモトキヨシホールディングスに売却し、キャピタルゲインを取得。10月1日には創業家の百崎栄一社長が代表権のない取締役会長になり、経営からも事実上退いた。あんくるふじやの場合も、現社長が自分の手に余ると判断したと見られる。
ドラッグイレブンとダイレックスは投資ファンドが売却した。両社とも創業者からファンドの所有になっていた。
【宗像 三郎】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら