高度な経済成長を続けていると言われる中国において、最近、温州商人の夜逃げが多発しているという。温州といえば浙江省南部に位置する中国の経済技術開発区で、「温州モデル」と言われる経済モデルは中国経済の強さを表す一例とも言われている。温州出身の商人は"中国のユダヤ人"とも称され、中国全土で投資する商人として知られている。しかし、最近はこの神話が崩壊しつつあるようだ。
中国経済情報を専門に取り扱う中国経済新聞(2011年10月15日号)によれば、ここ最近、温州商人が借金と高利ローンが返済できないため、頻繁に夜逃げしているという。今年9月には浙江省温州市で企業家の集団失踪事件が発生し、話題となった。中国経済の中でも経済が活性化している温州市にて、そのような事件が発生することは誠に考えにくいが、同紙によれば10月初旬までで少なくとも十数名の企業家が夜逃げしたそうだ。
夜逃げの背景に中国政府が不動産市場の整備を行なったことがあげられる。温州商人の間では「工場経営より不動産転がし」が流行し、事実、温州商人は数年前まで不動産売買により巨額の富を得ていた。それに味を占めた温州の企業の多くが不動産投資で得た利益で、また不動産投資を行う構図となっていたが、昨年末から中国政府が不動産市場の整備を始めたことで、銀行ローンが引き締めに入り、投機的不動産購入を制限することで、温州式投資モデルが崩壊、経営を維持できなくなった温州商人たちが夜逃げする異様な自体となっている。
日本もかつて2度の不動産バブルを経験した。日本も経営者の夜逃げが多発したが、そういう意味では中国も日本と同じ道を辿っているということになる。しかしながら、問題はそれだけには留まらない。企業家が夜逃げすれば、企業は倒産し、多数の失業者が発生するからだ。投資失敗による夜逃げ者の続出が、中国の経済成長の足かせになる可能性をも秘めている。
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