＜ストックビジネスの輝きは昭和60年代から＞

　上村建設（株）に、福岡県のゼネコン業界トップとしての評価が定まったのは、そう古いことではない。平成に入りバブルが弾け、同業者のトップ（完工高ベース）たちが倒れるなかで、上村建設の営々と築かれてきたストックビジネス（賃貸アパート管理）が注目されるようになったのである。1959年に設立されて以降、アパートを受注して施主に物件を引きわたし、そこで請負終わりではなくアパート管理までをこなすビジネススタイル（請負業を超えるビジネス）が、１万戸を超える時点（昭和60年代）で脅威の的になりだしたのだ。

　昭和50年代までは、福岡都市圏では完工高80億円の松本組を頂点とした業界の体制が構築されていた（支えは官公工事談合システム）。昭和60年代になって、まず東建設が100億円の工事高を突破し、高木工務店が後に続いた。さらに、2社を見習って橋詰工務店などがマンション請負で急伸してきた。しかし、これらの企業は不動産絡みにも手を染めたが、マンション請負を目的にしたビジネスの域を突破できなかった。結果、大半の業者は98（平成10）年頃までには淘汰された。こういう時代転換を背景にして、同社の企業戦略が羨望の的になったのだ。

　現在、「脱請負のビジネスとは？」が論じられているが、その究極の実現がこの上村建設だ。賃貸アパート管理をしている子会社（株）ハッピーハウスは、管理戸数２万5,000戸を超える。借り手の入退去が常に繰り返されているのだが、退去時の工事によって、上村建設に年間20億円を凌ぐ工事が流れてくるのだ。「まさしく親孝行の子会社である」（上村社長の弁）。これだけの数を管理していれば、膨大な情報が蓄積されていく。

＜農業兼業地主の世代交代への対応＞

　同社の主力受注先は、JAグループ加盟の農業兼業地主であったことは周知のことである。この地主の世代交代が、急速に進んでいる。彼らに共通する思考は、あまり借金をしないということだ。2000年４月に、現代表の上村秀敏氏が２代目社長に就任した。そこで考案したのが、「ステラシリーズ」である。６戸、９戸、12戸という小ロットのアパートシリーズだ。お客（２代目、３代目の地主）の望みをキャッチし、迅速に対応するのが同社の強みである。

　お客の好みや要望も、多岐かつ複雑になってくる。「郊外から都心近くに物件を求める」という地主も現れてくる。まずはこの家主の要望する物件情報を、同業者に先んじてつかめるかが営業の生命戦だ。もちろん、つかむだけでは駄目である。求められる物件の確保が、最重要課題だ。この案件に対して、同社は貪欲にこなしていく。この５年で福岡都心周辺に上村建設の現場が増えたのは、家主の買い替え案件に素早く応対できた証明なのである。

　JAグループに食い込もうとしてきた同業者は、照栄建設ほか多くいる。だが、同社の縦横無尽の情報ネットワークには歯が立たない。JAグループに所属する農業従事者（兼業者が大半）集団に掘り下げた組織網は、同社に無限の情報をもたらしてくれる。この情報力ネットワークの価値は、優に100億円以上はあるだろう。

＜COMPANY INFORMATION＞
■上村建設（株）
代　表：上村　秀敏
所在地：福岡市博多区住吉4-3-2
設　立：1959年2月
資本金：1億円
売上高：（10/10）195億3,458万円

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