A社はかつて食中毒を起こした。力量を超える大人数への料理提供が原因だ。顧客に謝罪して回った代表は激しい批判を浴びた。深刻な事態だけにどれほど激烈な言葉を浴びたか想像に難くない。

　先ごろ福岡市内で食中毒が発生した飲食店に取材依頼したところ「新聞に掲載されて痛い思いをした。ようやく沈静化したのに、なぜまた蒸し返すようなことをするのか」として、コメントを得られなかった。相応に知名度のある飲食店だっただけに新聞報道による打撃もひとしおだったに違いない。「再発防止に向けて衛生面で徹底した対策を行なっている」ことからこれ以上の事実の露出を抑えたいというのは本音だろう。

　Ａ社の辛さをあらために思い知らされた。ところが、Ａ社代表は当時を振り返り「苦しい思いをしたのはお客様です。お詫びは当たり前、お客様はその後の対応を見ています」と、語る。
Ａ社は人材育成、組織強化に努め、現在は上場企業となっている。

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