<次の一手は人材強化・活性化>
上村秀敏社長は、2代目を継いで11年になる。社長に就任して5年くらいは、「先代の偉大な事業遺産をどう守り、発展させるか」ということに経営課題を収斂し、必死になって奮闘してきた。しかし、さすが経営道を11年も極めてくると、「次の企業繁栄持続」を思案することが問われるようになってくる。まずは、先代から仕えてきた幹部たちが引退してしまった。そうなると、秀敏社長時代の幹部たちの輩出が、緊急の課題となってきた。同社長はその点に関して、十分に意識している。最近は、しきりに「企業存続にとって人材がすべてだ」と公言している。
社員たちには常々、「外部からスカウトされる人材になれ!!」「独立できる人材になれ!!」と語りかけている。「スカウト指名を受けられない社員は、人材足り得ない。己を磨きに磨きあげて人を使うポストを自力でつかまないと、会社は面倒見きれないよ」と叱咤激励する。「社員の皆さんに頑張って成果を残していただけないと、私は社長の地位に安閑とできない。私も必死にやるから君たちも頼むよ」と、毎日、口酸っぱく語り続ける。
「特定の専門部署は外部招来もあるが、基本的には自前で人材育成していきたい。人材戦略最大のポイントは、30代を徹底的に鍛え上げ、経営幹部に登用できるような人材に育成することだ」と人材戦略の要諦を説く。この30代の人材層が、次なる上村建設の繁栄持続を担ってくれることは間違いない。業績の伸展させている企業は、10年、20年先を見通した事業戦略=人材戦略の手を打っていける。ここが同社の本当の強みである。
<3社を一体化させた事業の展開>
「『ステラシリーズ』が好調といえども、受注工事の小口化ばかりが目立ってはいけない」と上村社長は気を緩めない。たしかに、会社の広告塔になり得るような大型工事は、年間2~3件は欲しい。施行技術のレベルの維持・向上のためにも、大型工事の受注確保は不可欠の問題だ。社員たちの士気向上にも、大いに関わってくる問題である。かつてはベスト電器、パチンコ遊技場などから15億円単位の受注もあったが、その穴埋めが今後の課題であろう。
分譲マンションに関しては、請負に徹することにしている。過去の苦い経験から、マンション自社販売事業に手を染めることを禁じた。「手堅い経営をしている」と評価できるデペロッパーとしか、受注取組をしない。まずは、無茶な仕事からは敬遠することを原則にしている。生え抜きの海千山千のベテラン営業マンが引退したなかで、30代から営業のキーマンが登場するのは時間の問題であろう。受注面での死角はないと見る。
他業者と比較して同社の決定的な優位性は、関連グループで事業戦略が練れることである。「上村建設」「上村倉庫」「ハッピーハウス」―この3社が三位一体となった戦略の構築が、容易に可能だ。たとえば、上村倉庫でビル建設を企画し、施工はもちろん上村建設、そして管理はハッピーハウスと、任務分担を行なえるのである。従来は3社バラバラの動きが目立っていた。この手法を改め、"三社一体"となった巧妙な戦略で仕事を創っていく。やり方を工夫すれば、莫大な事業規模を創出することもわけない。この総合力が、上村建設グループの底力と言える。
「業界が縮小していくことは間違いないわけだから、油断は命取りになる。先代からの『2期連続赤字を計上したら店を畳む(廃業する)』という遺訓を社員たちに浸透させて、経営の舵取りを行なっていきたい」と、気を引き締める上村社長である。
(了)
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<COMPANY INFORMATION>
■上村建設(株)
代 表:上村 秀敏
所在地:福岡市博多区住吉4-3-2
設 立:1959年2月
資本金:1億円
売上高:(10/10)195億3,458万円
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