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慢性的赤字を抱える公的医療機関(後)
発信!北九州
2011年10月19日 07:00

<絡み合う諸問題>

 医療の現状を経営環境の視点から見てきたが、医療を取り巻く問題は複雑かつ多岐にわたる。医療費の増大や医師不足などはよく知られた話であり、直近であれば「食料安全保障の自殺」として農業従事者から強い抵抗を受けているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)も医療市場の開放としての側面を持つ。日本医師会は、「国民皆保険制度の崩壊につながる」としてTPP加盟に警戒感を示しているが、従来から高い参入障壁を指摘されているだけに、どこまで抗えるかは不透明な情勢だ。

表

 また、一口に「医師不足」と言っても、問題は意外に複雑だ。よく耳にする地方での医師不足は、医師の絶対数不足というよりも、地域的な偏在に主たる原因がある。高額な報酬で医師の確保を試みた例もあるが、労働環境の苛酷さに加えて高額な報酬自体が地域住民との軋轢の原因になる場合もあり、思うように進んでいないのが現状のようだ。他方、医師不足は都市部でも言われているが、上の表にもあるように医師数自体は増えており、(統計の取り方に差異はあるが)他国との比較でも遜色はない。ただし、病床100床当たり医師数に換算すると急激に下がり、患者の平均在院日数も極端に長い傾向にある。我が国の病床数が他国と比較して圧倒的に多いことに照らせば、多くの患者を長期にわたって院内に囲い込み、それゆえに人手不足に陥っている病院経営の実態が垣間見える。もちろん、そうでもしなければ経営が成り立たない薄利多売とも言うべき診療報酬制度が背後には控えており、ここに手を付けようとすれば、最終的には国民皆保険の制度設計にも影響をおよぼすことになろう。

 このように、医療における諸問題は相互に絡み合って複雑さを増し、いずれもが根本的な制度設計に連なる傾向があるように思われる。また、先に見た各地域医療機関の経営的惨状は、業界の病理が末端の病院にまでおよんでいることを推認させる。ある地元医療法人の調査では、医療サービスに「満足」と答えた患者が55%であるのに対し、「不満」は22%にとどまっていた。これが将来的に持続可能なものであるのか、あるいは巨額の財政支出に支えられた砂上の楼閣であったのか、これを契機に、我々は改めて考え直してみる必要があるのではないだろうか。

【田口 芳州】

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