九州電力・玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の再稼働を巡る「やらせメール」問題で、枝野幸男経済産業大臣は、第三者委員会(委員長・郷原信郎弁護士)の事実認定を採用しなかった九州電力の最終報告書を「理解不能だ」などと強く批判した。
また、眞鍋利應社長が続投表明したことについて問われると「それ以前の問題だ」と九州電力首脳の企業統治能力の欠如にも言及し、眞鍋社長と松尾新吾会長の経営責任について、「民間企業のトップがどう責任を取るかと言うことで、九電の判断だ」と述べるにとどめてはいるが、暗に責任を問う姿勢をにじませている。
引責辞任を表明していた眞鍋社長は記者会見の席上で、続投表明と第三者委員会の最終報告書の核心部分を骨抜きにして、「無実と考えている方に濡れ衣を着せることはできない」と古川康佐賀県知事を擁護。また郷原氏を「(すでに)委員長ではない」と発言している。
もし、東日本大震災による福島原発の事故が起きなければ、「やらせメール」事件は発覚しなかったら、玄海原発の再稼働もすんなりと承認されていただろう。また松尾会長の後を受けて、眞鍋九経連会長が誕生していたであろう。
現実に戻ると、九電は第三者委員会の意見を尊重せず、取締役は誰ひとり処分されていない。これは九電の取締役会がイエスマンばかりで機能していない証拠である。つまり企業統治能力やコンプライアンスの欠如を物語っており、株主や電力利用者を無視した自爆行為に等しい。
九経連の会長に歴代九州電力の会長が九州財界のドンとして君臨し続けてきた。九州各県を代表する企業や銀行のトップを副会長に従える構図である。
今回の一連の流れのなかで、はたして、独占企業である九電が九経連の会長にふさわしい人材を輩出する企業であったのか、その企業体質が問われている。
日本の経済自体が厳しいなか、九州も例外ではない。今こそ九経連は、より広い識見と強いリーダーシップを持ったトップのもとで、九州経済を牽引する組織に変えていくことが求められている。
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