<業者側「一方的な契約解除」>
総務省の I C T 事業で採択されていた、福岡県大川市のショッピングサイト事業をめぐる契約問題で、民間業者が同事業の主体である財団法人を提訴していたことがわかった。訴えられたのは(財)大川総合インテリア産業振興センター(福岡県大川市、土井彌一郎理事長)である。
総務省は2010年度、I T を活用した地域振興を目的とする「地域雇用創造ICT絆プロジェクト」を実施。提訴した業者は、同事業の公募に関して10年12月初旬、大川市の職員から協力を求められ、総務省に提出する申請書類の作成において、ネットショッピングのシステムなどの専門的分野を担当したという。
同年12月末、申請した事業は採択され、同業者は、11年1月から家具をインターネットで販売するショッピングサイトの制作を始めたが、2月中旬に同事業の主体である財団法人に契約を解除された。この解約について、業者側は「一方的である」として、すでに進めていた制作費などの賠償を求めている。
<投入されたのは2,200万円の血税>
取材に対し、同事業の申請や業者とのやり取りを担当していた大川市職員は、「解約については財団法人が行なっており、その理由は知らない」としたうえで、「解約のリスク(訴訟など)については財団法人に説明していた」と、主張。一方、財団法人は、提訴されている事実を認めたうえで詳細については「ノーコメント」とした。
総務省によると、ICT事業全体に10年度予備費40億円があてられ、全国で73件が採択された。採択された事業は3月末で終了。大川市で採択された事業は、「家具産地・大川市ネットマーケット事業」で、交付金として2,200万円が支出されたという。
複数の関係者の話では、訴訟を起こした業者の後、(株)ザイナス(本社:福岡市早良区、吉良久雄代表)が同事業におけるショッピングサイトの制作を行なった。そして、3月末までの約1カ月間、ほぼ突貫工事とも言えるあわただしさで、大川家具のショッピングサイト「大川ジャパンプレミアムマーケット」が作られたという。
同サイトについて、事業の検証を行なっている総務省の担当は「技術的にとくに優れているところはない」としている。実際にできあがったサイトだけを見ても、交付金の額2,200万円が適正かどうかについては見ただけではわからず、はたして、霞ヶ関にいて画面や文書などで正しく評価ができるものかどうか疑問が残る。
また、2,200万円の血税を原資とする以上、採択事業は、真に地域振興のため、すなわち大川市民のために行なわれなければならない。途中まで携わっていた業者を変え、その結果、別の業者が短期間であわてて期限に間に合わせるというような性質のものではない。この不可解なトラブルには、一体、どのような背景があるのだろうか―。
※当初、「家具産地・大川市ネットマーケット」の交付金について「3,400万円」と記載していましたが、掲載後、総務省から実際に支出したのは「2,200万円」であったとの説明があったため、訂正いたします。
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