2011年4月10日、福岡市議会選挙が行なわれ、第70代福岡市議会議長に森英鷹氏が就任した。市議会議長としての務めや昨今問題となっている入札制度、さらには議員の海外視察の是非など、さまざまなテーマについて話を聞いた。

＜議長としての務め＞
　
　―今年の4月に、第70代福岡市議会議長に就任されました。現在の経済情勢や都市としての福岡の状況、そして福岡市行政の現状について、市議会議長としての立場からどのようにお考えでしょうか。
　
　森　私の務めとしては、やはり議会のみなさんに「できるだけレベルの高い議論をしてほしい」というのが、まず1つあります。そして、「これから議会をどのように活性化していくのか」―そのあたりに集中していかなければならないと思っております。
　そのためには、市長サイドと議会が2元代表制のなかで、しっかりとした議論を展開していかなければなりません。また、議論をしていくにあたっては、議員の皆さんにはよく勉強してもらわなければなりませんので、勉強しやすい環境―さまざまなところで意見を述べることのできるような環境をつくっていかなければならない、と思っております。
　
　―今回の市議選での新人の数は、前回に比べて少なかったのでしょうか。
　
　森　あまり変わらないのではないでしょうか。今回、市議会選挙で初当選したのは15名です。今回の選挙では、以前まで8会派だったのが7会派になり、新たな党として「みんなの党」ができました。
　
　―自民党も、"長老"がだいぶ減ってきたように見えますが。
　
　森　そうですね。ちょうど入れ替わりの時期なのでしょうか。
　私が市議会議員に初当選した頃は、多くのベテラン議員の方々がいらっしゃいましたし、大変勉強されている先輩方もおられました。
　たとえば、私が新人の頃、市民の感覚で「あれがおかしい」「これがおかしい」と行政にいろいろと提案したことがあります。しかし、行政の職員はいろいろと知っているので、「これだけ難しい」「あれだけ難しい」と言ってくるわけです。それでも食い下がって「こうしたらできる」「ああしたらできる」と提案していると、それを聞いていた先輩議員の方が「こうしたらできるはずだ」と一喝されました。すると、それが的確な指摘だったようで、行政の職員は反論できずに押し黙ってしまいました。このように、本来エキスパートであるはずの行政職員を超えるほど、勉強されている先輩方が多くおられました。
　
　―国でも福岡市でも一緒ですが、「行政マンは使わないといけない」とよく言います。しかし、今の実例にあるように、政治家も行政に負けないくらい勉強をし、きちんと実務を知っておかなければ、安易に「使う」と言っても難しいものがあります。
　
　森　その通りです。やはり、そのような議員が増えていってほしいと思います。
　また、行政と政治家との関係で述べますと、たとえば行政マンには、あまり新しいことに取り組もうとしたがらない方が多いようにも思います。これは何と言いますか、性（さが）のようなものなのか、それとも職務を遂行するうえで問題を起こしたくないという消極性の表れなのでしょうか...。

　しかし、もちろんそのようななかでも、「新しいことに取り組もう」というような方もいるわけです。そういった方が何かアクションを起こし、その結果として仮に失敗したとしても、単に失敗を責めるのではなく、「市民のためにこれだけやっているじゃないか」と一定の評価ができるような議会でなくてはならない、と思っています。

　行政と政治家という対立軸だけで見るのではなく、「市民のために」という視点でお互いが取り組んでいくことが大事です。ことが起きないように職務をこなすだけでは、何も変わらないと思います。

　―世のなかは、大激変しているわけですからね。政治家自身も、「きちんと行政のことを勉強し、精通していかなければならない」ということが基本ですね。

｜　（２）　≫

*記事へのご意見はこちら

※記事へのご意見はこちら