2011年4月10日、福岡市議会選挙が行なわれ、第70代福岡市議会議長に森英鷹氏が就任した。市議会議長としての務めや昨今問題となっている入札制度、さらには議員の海外視察の是非など、さまざまなテーマについて話を聞いた。
<海外視察の是非>
森 近年では「海外に視察に行く」と言うと、単に「海外旅行」という発想になってしまう会派の方もいます。そして、新聞などでも「高級海外旅行」というような書き方がされてしまいます。しかし、実際は旅行ではありませんし、パックツアーで行っているわけでもありません。訪問先の役所にアポイントを取り、専属の通訳を付けて現地にレクチャーを受けに行きますので、どうしても費用は高くかかってしまうのです。そのように、費用がかかるのは仕方がない部分はあるものの、批判を受けたくないということで、議員もだんだんと萎縮してしまってきているのが実情です。
―単なる「視察」との名目だけでの旅行ではなく、「このためにヨーロッパに行くんだ!」などと高らかに宣言されてから行かれたらいいのではないかと思います。そして、その視察で何を勉強してきたかを発表会で報告したり、ホームページでレポートを公開されたりするといいのではないでしょうか。
森 自民党では、そのような報告も出しています。
また、姉妹都市について言えば、福岡市には7つの姉妹都市がありまして、市民レベルでの交流はあります。しかし、議会の人間が姉妹都市についての知識もなく、また相手市議会との交流もないようでは、はたして姉妹都市と言えるのでしょうか。そのため議員には、せめて姉妹都市がどういったところかだけでも見せながら、相手市議会との交流を図っていく必要性を感じるのです。
―海外視察によって「議員たち1人ひとりに見識が広まった」ということが、きちんと立証されればいいと思います。
森 現在のようにインターネットが発達しているといっても、写真を見ようが文献を読もうが、百聞は一見に如かずというものです。私も一度ポートセールスで、イタリアの港とギリシャの港湾施設を見せてもらったことがあります。実際に現地に足を運んでみると、それぞれ地域性によって港の役割がまったく違うということを肌で感じられるわけです。それぞれの港湾施設の役割をしっかりと目指してあり、物流のみの港だったり、入ってきたものを工場で加工して製品化させたものを国内外に運ぶという港だったりと、特化した役割を持っています。そのようなものを実際に見てきていますので、福岡市のアイランドシティにおいても、その担う役割を一本化しなければならないと私はよく言うわけです。
やはり、実際に見るとよくわかりますし、見たうえで「そこに投資する費用は無駄使いではないのか」「将来に対する投資なのか」ということをきちんと判断すれば、結果も違います。そのためにも、実際にやってきたところを直に見ることは大変重要だと思いますし、議員にはそういった機会をできるだけつくってあげたいと思っています。
現在はこういった経済情勢ですので可能かどうかはわかりませんし、あまり海外視察の件だけには集中はできません。しかし、もっと議員に勉強をさせようと思うのであれば、行政、議会、民間も含めて一緒に現地に足を運び、交流を深めたり、勉強をしたりするような機会をつくるのは重要だと思います。
―そういった視察で得たことを、きちんと政策作りに活かしてもらえればいいと思います。
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