(以下文章は一般社団法人市民講座運営委員会発行、『住宅塗り替え工事で失敗しないために読む本』から抜粋しています。)
業者選びの失敗が招く塗り替えクレーム
【住宅リフォーム工事全体のなかで塗装に関するトラブルは4割】
住宅の価値を守り、長く住み続けていくために必要不可欠な外壁・屋根の塗り替え工事。しかし実は、最もクレームが多い工事であることをご存知でしょうか。
(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターの発表により、住宅リフォーム工事全体のなかで、外壁・屋根に関するトラブルが4割以上を占めていることが明らかになっています。一番多いのは雨漏りのトラブルで、剥がれ・外れ・漏水と続きます。しかも、35種類ほどの内容がある住宅リフォーム工事のなかで、塗り替え工事にかかる費用の平均単価は、その他の工事の2倍以上にもなるといわれています。高額で絶対に失敗したくないのが塗り替え工事なのです。
また、ショールームやカタログなどで事前に確認できるキッチン・バスルーム・トイレなどのリフォームと違い、塗り替えについては最後まで仕上がらないと確認しづらいという特徴もあります。
さらに、屋根の雨漏りや外壁のひび割れ・剥がれ落ちなどは、施工後数年たってから判明する場合がほとんどであり、工事完了時にはなかなか判断できません。それではなぜ、プロに頼んでいるはずなのにこのような事態が発生するのでしょうか。高い金額を支払って、逆に住宅の状態を悪化させてしまうことになるのなら、一般の消費者である発注者側からすると、不安で塗り替えを行なうことができないのは当然です。
だからこそ、発注者側も武器を身につける必要があります。それは、「信頼できる業者を選ぶ力」です。そこで次のページからはまず、クレーム事例のなかでも特に多い4つのケースをご紹介し、信頼できない業者に多く見られる傾向を解説します。
クレーム事例(1) あやふやな「坪数一式見積り」
【見積りは詳細に明記されていますか?】
詳細項目が明記されていない曖昧な見積りは、高い確率でクレームが起きるもととなります。よく見られるのが、塗装を行なう面積が正しく計測されないまま、住宅の坪数を基準にして算出された見積りです。
工事を行なう家の図面や建物の実地計測によって、塗装を行なう面積を正確に算出することが正しい流れですが、単純に建物の坪数(床面積)で価格を割り出し、曖昧な一式見積りにしてしまう業者が当たり前のように存在しています。そのため同じ住宅の塗り替え工事であるにも関わらず、業者ごとの見積り額には大きな差が生じます。
ここで大切なのは、表面的な価格の安さではなく、きちんと塗装面積が計測されたうえで算出された価格であるかどうかという点です。工事内容の分からない「一式」ではなく、各部位ごとに分けて塗装面積の根拠とともに金額が提示されていることを確認しましょう。
また、坪数(床面積を基準とした)での見積りは、注意が必要です。住宅を傷つけてしまうことにもなりかねません。なぜなら、、同じ坪数でも建物によって塗装面積は違う為、正しい塗装面積を算出する必要があります。しかし、坪単価の見積もりでは正しい塗装面積が計算されていないために、塗料メーカーより規定されている正しい塗布量が守られていないか可能性もあります。正しい塗布量とは、その塗料の性能を発揮させるために各塗料メーカーが規定している必要な塗料の量のことです。当然、塗装面積によってその量は異なるのですが、そもそも正しく計測されていないので、守られるはずはありません。塗り替え工事が完了した時点では、美しく塗り替えられているように感じるかもしれませんが、それは表面だけで、住宅を守るという塗装の役割はまったく果たされていないといえるでしょう。
こうなるともう手遅れであり、価格の安さで選んだはずが、結局は大損という事態になります。「きちんと塗装面積を計測し、仕様書に明記された塗布量を守る」、一見当たり前のように思えることを、当たり前に実行してくれる心強い業者を選びましょう。
【本日のポイント】
■ 一式見積りにしてしまうと、業者ごとの見積り額に大きな差が生じる
■ 坪数見積りの場合、塗装面積と詳細項目が明確ではない
■ 塗装面積が正確でなければ、各塗料メーカー規定通りの工事ができない
(以上、一般社団法人市民講座運営委員会発行、『住宅塗り替え工事で失敗しないために読む本』より。)
【掲載予定】
10/25(金).「坪数一式見積り」に御用心!業者選びの失敗が招く塗り替えクレーム
10/26(土). 失敗しないためにしっておくべき基礎知識
10/28(月). 業者決定までの成功ポイント(1) ちゃんと診断されていますか?
10/29(火). 業者決定までの成功ポイント(2) 納得できる見積書ですか?
10/30(水). 業者決定までの成功ポイント(3) 工事の品質は確保されていますか?
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