＜喫緊に求められる原発安全対策＞
　３．１１の東日本大震災発生にともない、世界的に最大級の規模と言える東京電力・福島第一原子力発電所事故が発生した。福島県民はもちろんのこと、関東地域の人々においても、同事故による放射性物質の汚染への不安は募る一方だ。他の原発立地自治体においても周辺住民の原発に対する不安は高まっている。

　福岡県糸島市は、九州電力・玄海原子力発電所（佐賀県玄海町）から半径30ｋｍ圏内の『緊急防護措置計画範囲（ＵＰＺ）』にほぼ全域が入る。有事の際、同市における避難場所とルート、避難方法の確立。さらには緊急物資の調達・備蓄、農畜水産物への影響をリサーチした上での対策が求められる。福島第一原発事故を受け、玄海原発から最も近いところが20ｋｍ圏内にある糸島市では、なおさら住民に不安が高まっている。

　糸島市選出の月形祐二県議は福島第一原発事故にともない、「国の基準を一からやり直し、安全性の確保については、九州電力との綿密な対話を進めないといけない。地域住民を放射能の危険から守ることは使命だ」と、訴え続けてきた。
また、「国の原子力安全委員会の指針で定める"防災対策を重点的に充実すべき地域"（EPZ）は原発から半径８～10ｋｍ圏内。糸島はその対象地域外のため、県や市が十分に原発事故の防災対策を取ってきたとは言い難い。３．１１の大震災では、福島第一原発から半径20ｋｍ圏内で避難指示が出され、20～30ｋｍ圏内で自主避難が促される事態となった。国の指針や、県と市の地域防災計画を見直していく」と、防災面の強化についての見解を述べている。

　６月の県議会で月形県議は、『原子力発電所に対する安全対策』について以下のように述べている。

　「発電量の約40％を原発に依存する九州電力が、今すぐすべての原発を停止することは、県民生活や経済活動に多大の支障を来すおそれがある。これらを鑑み、いかに安全を担保していくかが肝要」

　「安全性の確保を厳格に求め、原発から半径８～10ｋｍを目安とする国の方針により、EPZ外の自治体へは何の情報も、相談もしなくてもよいということであり、電力会社もEPZ外からの自治体の要請を拒む理由としてきた。英国の科学者は、1基の炉心溶融と放射性物質の放出で50ｋｍの避難が妥当と示している。福島の原発を見ても半径20ｋｍ圏にある自治体はEPZに加えるべきである」

　「原子力安全協定については、これまでは原発や核燃料リサイクル施設を抱える自治体が住民の安全確保のため、施設の稼働をめぐって電力事業者と結ぶ協定であった。３．11の大震災後は、原発近くにある立地自治体以外の市や町が協定締結を求める動きが相次いでいる。九州電力も、正式な協定締結の要請はまだ来てないが、要請があれば検討していくとのコメントを発表した。もし、玄海原発で事故が発生すれば、糸島市のみならず、福岡市にも多大な影響をおよぼす。糸島市自体が締結する意思があっても、隣接ではなく県境を越えているため協定締結は難しい。九州電力と、佐賀県の隣接県として福岡県も原子力安全協定を結ぶべきである。なぜならEPZ外ということで、九州電力からは何の情報も入らず、相談もない。協定締結により、県として糸島市へ正確な情報を発信し、糸島市の要望を九州電力へ繋げる環境を整えねばならない」

　「原発事故に対する市民の不安を解消するため、糸島市は松本市長を中心にいち早く防災計画の見直しを実施。避難場所や避難経路の調査、沃素剤など緊急物資などの備蓄準備、自主防災組織の構築にも着手した。しかし、原発事故に対する防災計画など、だれも経験したことがないのが実情である。糸島市には人口10万人、高齢者、障害者、要介護者、入院者、乳幼児など避難困難な方々が２万7,000人、家畜約２万4,500頭、鶏約40万羽もいるわけであり、玄海原発から半径30ｋｍの人口は、７市で約25万人とされている。これだけの人口や家畜の避難先、避難手段の確保など、当該市町村だけでは対応することは困難であり、県の支援なくしては不可能である」

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