インターネットの「人材」関連業界における影響は、その後も益々大きくなっていきます。
就職(新卒)の分野では、資金力のあるR社とM社の2社がたちまち「就活サイト」(新卒学生向け就職情報サイト)を構築し市場を握りました。この絶対的優位性は現在も変わっていません。ここがインターネットの恐いところです。利益を得られるのは、網で囲ってしまった1社だけです。実力が拮抗している場合でも2社程度がMAXです。
すべての学生・企業は、これらのサイト上でしか身動きができないことになったのです。とても恐ろしいことのようですが、学生は気づいていません。IT世代なので、見かけの情報は豊富になるため喜んでいるのかも知れません。
企業は気付いていてもどうしようもありません。自社サイトという方法もありますが、資金力の豊富な大手企業でも、専任で担当する人間を置くわけではないので、レベル的に追いつきませんし、本業優先でそれどころではない。結局諦めるしかないのです。
就職(新卒)の世界に続いて、転職(中途採用)の話に入っていきます。Q社が「人材紹介会社のポータルサイト」というビジネスモデルを作ったのはちょうどこの頃です。
当時の新聞記事はとても小さく、もちろん一般人には無関係なので、世間では話題にさえなりませんでした。
ところがその世間の反応とは別に、このビジネスモデル「人材紹介会社のポータルサイト」が発表されたときに人材紹介業界に大きな衝撃が走りました。その反応は、以下のように分かれます。
老舗人材紹介会社の経営者は、「できるはずがない。やってはいけないことだ。道徳的には塀の上を歩いている」と嘲笑しました。
「お見合いや結婚式場サイトでもあるまいし・・・」とのたもうた経営者の方もおりました。じつは今、業界大手のE社は結婚式場サイトも運営しているのです。皮肉なことです。
一方で、中小・零細の人材紹介会社の経営者には好評でした。人材紹介業界は、その多くが従業員10名以下の零細企業です。従業員が少ないことが、そのままレベルが低いということには繋がりませんが、資金力がないことは確かです。
「自分で高価なサイトを構築する必要もなく、見栄えの良いポータルに参加できる。入ってしまえば人材は素人だから、コンサルティング能力の判断はつかない。コンサルティング能力の高い他社と横並びになれる」と思ったからです。それまでは、情報が公開されていなかったので、実績がすべてで、後発の会社は20年くらい実績を積まないと、市場で認知されなかったからです。
<プロフィール>
富士山 太郎(ふじやま たろう)
ヘッドハンター。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。財界、経営団体の会合に300回を超えて参加。各業界に幅広い人脈を持つ。
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