新聞のラテ欄で気になるテレビ番組を発見したが、「録画したところで、どうせ忙しくて観る時間がない」と思い、録画さえしなかった。また、翌日になってから、観たい内容の番組が放送されていたことを知り、見逃したことをただ残念がる。これらは、昔と変わらない日常的な光景だ。
自宅のレコーダーに録画したテレビ番組を、通勤・通学中にスマートフォンで観る。途中まで観たら、続きは休憩時間にパソコンやタブレット端末で観て、自宅に戻ったら、家族と面白かった部分だけを一緒に観たい。また、見逃した番組は、後日テレビ局からダウンロードする形で購入できたら、どれほど良いだろう。
テレビは前述の通り、常に技術革新によって高画質化を繰り返してきた。より大きく、より高画質になったテレビが自宅に運び込まれたとき、家族全員が興奮し、驚嘆の声とともにそれを迎え入れた。テレビは常にホームエンターテイメントの中心である。そして、この先も同じようなことが続いていくだろう。ただ、もはや、それだけでは足りない時代が来てしまったのではないだろうか。「4K」大いに結構。だが、戦うべき相手は他にもいる。
日本の著作権は、その仕組みが複雑で、世界的に見ても厳しい。だから、自由なダビングやダウンロード販売はできない。しかし、だからと言って何もしないのであれば、真のイノベーションは成し得ないのではないか。
日本音楽著作権協会(JASRAC)は、この3年の間にインターネット動画共有サイト「YouTube」や動画配信サイトの「Ustream」などと包括的利用許諾契約を締結し、著作権料を得る方向に転換するなど、緩和の動きを見せている。メーカー側が一丸となって、ウィン-ウィンの関係が築ける提案ができれば、一筋の光が見える。
ソニーの発表によると、第2四半期の連結業績は、純損益が270億円の赤字と、前年同期の311億円の黒字から大きく悪化している。また、売上高も1兆5,750億円と前年同期比で、9.1%落ち込んだ。建て直しを図る平井一夫副社長は、「テレビ、スマートフォン、パソコン、タブレットの4機器の連携を強化して販売拡大に繋げる」と、コメントした。しかし、コンテンツサービスにおいては、自社のものに限られてしまい、独自のコンテンツを配信する「スマートテレビ」もインパクトに欠ける。やはり、そこから勇気ある一歩を踏み出すべきだ。
「iPhone 4S」は、前機種の「4」からデザインの大幅な変更はなく、スペック的な進化も決して派手なものではなかった。その代わり、内部を見直し、使い勝手をより快適に、よりユーザーフレンドリーな端末に仕上がっている。そして、この端末が"熱狂的に"市場に受け入れられたことを、もっと重く受け止めるべきだ。
低迷するテレビ産業の再起と、この先の永続的な発展のためには、柔軟な姿勢が求められる。アジア諸国との熾烈な競争をメイドインジャパンが勝ち抜くには、真のイノベーションを追及し続けなければならない。
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