九州電力による、強引な玄海原発4号機の再稼動から間もない11月2日午前、福島第1原発2号機で、放射性キセノンが検出された。放射性キセノンは、核分裂の連鎖反応が拡大したときに検出されることがある物質で、2号機が臨界状態にあるのではとの推測が起こり、問題になった。「臨界」の文字に肝を冷やした格好になったが、東京電力は、一転してそれを否定した。
そもそも放射性キセノンという物質は、核分裂の連鎖反応が拡大して、文字通り限界を迎えてしまう「臨界」のときだけではなく、燃料内の放射性物質で自然に起こる「自発核分裂」の場合でも発生する。では、なぜ今回は自発核分裂であると結論付けることができたのか。
東電は、その根拠として、溶融した燃料内にあるキュリウム242や244が、散発的に核分裂を起こしてできるキセノンの量を推定すると、今回の検出結果と合うと説明。また、もし臨界が起きた場合は、少なくともこの1万倍以上の濃度でキセノンが検出されるはずで、今回の濃度では低すぎると判断した。さらに、核分裂が継続的に起こるには、中性子が必要で、これを吸収する効果があるホウ酸水を投入した後も、キセノンが検出されたことや、原子炉内の温度、圧力に異常が見られないことなどが、自発核分裂である根拠として挙げている。
また、今になって、キセノンが検出されて問題になったのは、先月(10月)末に2号機で格納容器内の放射性物質を除去するシステムが運転を開始し、比較的濃度の低い物質も採取可能になったためという背景がある。なので、どうやら「臨界」という言葉に過敏になる必要はなさそうだ。
東電は今回の騒動に関して「炉の不安定化や外部の放射線量上昇などに繋がるものではない。冷温停止や事故収束に向けたスケジュールのステップ2終了の時期への影響はないと考えている」と発言したが、そもそも、キセノンが検出された段階で、それが臨界によるものなのか、それとも自発核分裂によるものなのか把握できていない状態こそ"不安定"なのであり、予断を許さない状態が続いていると思われる。
ところで、「臨界」と聞くと、思い起こされるのは、1999年に日本国内で初めて事故被曝による死亡者を出した東海村JCO臨界事故だ。国際原子力事象評価尺度(INES)からレベル4の評価を下された痛ましい事故で、至近距離で被曝した作業員3名中2名が死亡した。原因はマニュアルを無視したJCOのずさんな管理体制にあったとされ、合計で667名もの被曝者を出して事態が収拾した。実際に溶液を扱っていた作業員のひとりは、ウラン溶解液を溶解槽に移す作業中に「青い光が出た」と証言している。
原発が「臨界」に至ったとき、そこで何が起きるのか。
| (2) ≫
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら