<これ以上の譲歩は許されない>
日本は日中間の境界線が画定していない段階で「日中中間線」というカードを切ってしまっている以上、どんなに中国側が「日中中間線」をまたいで日本側の資源を吸い取ろうが、「春暁ガス田」「天外天ガス田」は中国側の排他的経済水域にあり、日本側は明らかに不利な立場にある。
日本政府はこれらの中国のガス田開発に対抗して、平成17(2005)年8月、帝国石油に「日中中間線」付近の試掘を許可した。しかし中国政府からの恫喝的抗議によって、帝国石油は試掘に着手できない状態が続いている。
同年10月、日本政府はガス田開発に関して、「日中中間線」をまたいだ日中双方の海域での共同開発を提案した。すると、平成18(2006)年3月、中国は日本側の提案を拒否し、逆に「日中中間線」の南東側の日本側排他的経済水域に関してのみ、日中で共同開発をしようと提案してきたのである。もちろん日本はこの提案を受け入れていない。
ここまでくると、ガス田を巡る日中協議は、日本が中国の要求を受け入れない限り決着しない可能性もある。しかし、日本はこれ以上の中国への譲歩や妥協は許されない。
日本は昭和43(1968)年9月、国連アジア極東経済委員会が東シナ海の大陸棚に、石油資源が埋蔵されていることを確認してから約40年近くが経つが、今まで一度も日本独自のガス田開発をしてこなかった。そのツケが今頃になって回ってきているのである。おまけに中国は「大陸棚自然延長」論に立ち、事実上、東シナ海全域を支配しようとしているのだ。
中国の軍事問題に詳しい平松茂雄氏によると、「平湖ガス田」「春暁ガス田」「天外天ガス田」などの施設には、それぞれヘリポートが設置され、これらのヘリポートは土台を堅牢にすれば、ハリアーのような垂直離発着機が発着できるばかりか、衛星の発射台としても利用できるとしている。
つまり、中国のガス田の施設は、単に資源を採掘・処理するだけでなく、戦略的拠点・軍事施設として利用することによって、東シナ海を「中国の海」にするための前線基地としても利用する意図があるのである。
<日本はガス田開発で反転攻勢をかけよ>
日本はこれら一連の動きが本格化する前に、中国に対抗して、速やかに「日中中間線」付近の日本側排他的経済水域でガス田開発を始めるべきである。
南シナ海では、中国は自らの拡張姿勢に対して、フィリピンが然るべき対応を取らないと見るや、ミスチーフ礁の不法占拠を既成事実化し、軍事力をちらつかせながら支配を拡大していった。南シナ海のミスチーフ礁を巡る中国とフィリピンの係争などは、日本が教訓とすべき典型的な事例である。
中国の恫喝や妨害行為があっても、海上自衛隊や海上保安庁の艦船を出して、強い国家意思を中国に示し、ガス田開発を行なうべきである。このままでは日本側排他的経済水域でも中国のガス田開発が始まる可能性がある。そうなれば、日本は東シナ海での権益をすべて失うことになる。
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