新しいビジネスモデル「人材紹介会社のポータルサイト」で、自転車操業からスタートしたQ社やE社が、我が世の春を迎えることとなった経緯は前回お話ししました。
今のような形になるまでは、いろいろな段階があったことも事実です。決して、順風満帆ではありません。サイト運営会社は、中小・零細会社しか集まっていないサイトでは見栄えが悪いので、無料でも半額でも、大手に入ってもらう働きかけをしていた時期さえあります。現在でも、人材紹介会社や人材募集企業の登録数を増やし続けなければ、売り上げが落ちるビジネスモデルであることに変わりはありません。
当時、大手の人材紹介会社のなかには、サイトに参画する条件として人材紹介会社の登録数を「50社以上にしない」という条件を出したところもありました。この「自転車操業」スタイルで、登録紹介会社数が増え続けると、市場が混乱すると考えたからです。現在は、なんと400を越える紹介会社が登録しています。
人材紹介会社や人材募集企業をすべて自分のサイト上に置き、集客した人材もコントロール(人材には全くその自覚はありません)してしまおうとするこのシステムはとても危険な側面を持っています。
本来、「人の生きざま」は、超アナログ的なものです。従って、「はっきりしないもの」「あいまいなもの」が存在します。無理にデジタル化して、ONやOFFの二つの要素で表わそうとすると、本来の自然や現実を歪めてしまいます。いわば、感性や心の眼を失うことになります。
すべてがサイト上だけで行なわれるこのシステムは、実体が不明です。まるで10年以上前にブレイクしたバーチャルリアルティの「たまごっち」ゲームに似ています。当時、「たまごっち」ゲームの子供に対する悪影響は、かなり大きくクローズアップされました。この時は、生き物が死んでもボタン(Reset)一つで生き返ることが問題になりました。子供が人間の生死に対して、現実感が無くなるというものでした。同様に、現実の人生にもゲームのような「Reset」ボタンは存在しないと思うのですが・・・。
<プロフィール>
富士山 太郎(ふじやま たろう)
ヘッドハンター。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。財界、経営団体の会合に300回を超えて参加。各業界に幅広い人脈を持つ。
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