<300万円の買い物>
この社員の場合には今回の新築引っ越しにあたって家電、家具、カーテンなどに300万円の買い物をした。結婚した際にもこんなに買い物しなかったそうだ。せいぜい150万円程度だったそうである。となると人は、やはり住宅を建てた際に最大の買い物をする習性があるのだ。住宅が建つということで金がまわるということがよーくわかる。3,750万円の住宅が売れればこの金額が回転してその10倍の3億7,500万円にふくれるということをあらためて認識するに至った。これこそ最大の景気浮揚策である。
「頭金を700万円もだしてさらに300万円の買い物ができるとはさぞかし豪儀だな」と疑問も抱いたのでこの社員に尋ねてみた。「たしかに住宅の資金は我々、夫婦が自力で工面しました。新築にともなう物品購入資金は親からの協力です。協力というよりも『遺産相続の前払い』と親から言われました」というのが真相のようだ。この社員曰く「家電などの購入するにあたってエコポイントは非常に助かりました」。エコポイントの乱発(消費カンフル剤に税金投入)が消費を活況させていることもわかった。だが、しかし――。
<若者の生活設計できる環境を造れ!!>
「新築住宅を手にした健気な夫婦を目撃して涙がこぼれた」と、前編に記述した。いまどき珍しい家族愛に感激したのである。じゃー、現代の若者たち(30代含む)が「愛あふれる家族を築きマイホームを求めないのか」というと必ずしもそうではない。よほどの特殊な思考の持ち主以外は誰だって「愛する者と所帯を持ち、子どもをつくり、マイホームを取得したい」という気持ちがあることに変わりがない。だが、生活設計できる職場が少ないのだ。1割の落後者についていえば、その原因の大半は本人に起因する。2割、3割の若者たちが「自分の生活設計、結婚設計が不可能」となれば国家経営に問題があるということになる。
4回度の司法書士試験を落ちた30歳の若者は悩み続けた。「今回の試験であきらめました。それで仕事を探そうとしましたが、食品工場での派遣の仕事しかないのが現実です。生活のためとはいえ時給700円の仕事を繰り返しながら『俺の人生の道は拓かれないのか』と観念した時期もありました」。この青年は必死の就職活動を行なった結果、「まー満足できる」職場と巡り合えた。「結婚していいなー」と思う女性との出会いもめぐってきた。
大学の文系学部を卒業した若者には厳しい現実が立ち塞がっている。比率でいえば文系出身の若者たちの30%は「30歳で年収300万円、そしてそれで頭打ち」という宿命を背負っているのである。これでは『人生設計ができるわけがない、家族を持てるわけがない』。一生、フーテン生活を余儀なくされるであろう。
政府が目先の景気浮揚策で小手先の対応するのも良いが、20代、30代前半の若者たちのためにそれなりの稼げる雇用の場を創出させる責任があるはずだ。国家に利益をもたらす年齢層を飼い殺していたら誰が国家に納税するのか。
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