記事「オリンパス『監理銘柄』に~問われるあずさ監査法人の責任」について、読者の方よりご意見メールをいただきましたので、ご紹介いたします。
はじめまして、この度当該記事の下記パラグラフに対して申し上げたいことがあり、御連絡差上げました。
「財務諸表の作成責任は企業、その適正性に関する責任が監査法人になったのは、ここ4~5年前からであり、それ以前は、監査法人に責任がある」
おっしゃる通り、財務諸表の作成責任は企業で、監査法人には監査結果に対する責任があります。このことを専門用語で二重責任の原則と言います。しかし、2002年度から監査基準に明記されたこの原則の考え方は、それ以前から実務のなかに存在しています。
したがって、2002年以前はすべての責任が監査法人にあり、2002年を機に責任分担制に変わったというようなことはありませんので訂正すべきです。
「ある関係者の話によると、あずさ監査法人は、問題を抱えているクライアントに対して報酬料の引き上げを求めたり、あるいは報酬料の大幅な引き上げ要求して企業に監査法人の変更を迫るような行為も見られたという」
この行為は監査法人による牽制行為であり、外部からの統制の役割を担うものなので、悪いことではありません。監査法人がいない上場企業は、有価証券報告書の提出ができなくなることから、上場廃止基準に抵触し、上場廃止に追い込まれます。
問題を抱えるクライアントから監査法人の変更を迫ることは、そのクライアントに上場廃止の不安を負わせるという点で牽制の機能を持っており、各証券取引所や金融庁はこの機能に期待しそのような上場廃止基準を定めたものと考えられています。
「あずさ監査法人は、今回の問題の発端となったオリンパスの「飛ばし」を見抜くことができず、M&Aの問題点を指摘することにより、担当を降りて新日本監査法人にその責任を「飛ばし」たのでは、とも言われている」
監査法人変更後の監査報酬は、4億円から2億円へと半減しています。新日本監査法人がダンピングによりオリンパスを獲得したという形跡がうかがえ、強制的にあずさが押し付けたというような記事の書き方には疑問があります。
「いずれ捜査が開始され真実が明らかになる。オリンパスの今後の行方とともに、あずさ監査法人も、提携していたアーサー・アンダーセン(エンロン事件で解散)と同様の運命を辿ることになるかもしれない」
今回の件とエンロン事件・カネボウ事件で異なることは、監査法人が粉飾に積極的にかかわっている可能性がとても低いという点です。あずさ監査法人は不正指摘後に監査契約を降りていることから、粉飾に積極的に加担したという見方をするのは難しいと思います。
したがって、アーサー・アンダーセンや中央青山監査法人と同様の運命をたどるかもしれないというのは、少し大げさだと思います。
今回、あずさ監査法人について問われていることは、巨額の飛ばしを発見できていなかった・もしくは看過したという問題に対する責任であり、他マスコミはそこに焦点を置いています。本記事はその視点とはかなり異なるものであり、そこが何も知らない読者の興味を駆り立てるのかもしれません。しかしながら、大変恐縮ですが、北山記者はもう少し勉強をなさったうえで記事をお書きになられたらいかがでしょうか。
インターネットが普及するなか、最近では特にマスコミが世論をミスリードするという問題が多々見られます。マスコミ関係者の方には、ご自身の世論への影響力を自覚いただき、お金ではなく真実を求めて情報を発信いただくことを期待しております。
大変恐縮ですが何卒宜しくお願い申し上げます。
貴重なご意見ありがとうございました。
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