<国会も動き出す>
暴力団排除の動きは、国レベルでも加速している。警察庁が暴力団対策法を改正して、規制を強化する方針を打ち出したのだ。もっとも警察庁の改正素案では、銃撃など危険な手段で民間企業に不法行為を繰り返した場合に、実行犯を特定できなくても暴力団の関与が明らかになれば「特に危険な団体」に指定することや、組事務所の使用制限や組員の行動規制することなどが盛り込まれており、暴力団に対する規制がメイン。暴力団排除条例のように事業者の行動に制約を設けるものではないが、暴排条例と暴対法が一体として運用されることからすれば、暴力団を孤立させる動きはいっそう強まるものと予想される。
もう1つ気になるのは、暴対法の改正が契機となり、暴排条例における「罰則」や「義務違反者に対する措置等」が強化されるのではないかという点だ。というのも、地方自治体の条例は法律の範囲内で制定され、罰則を設ける場合にも原則として上位法の枠内でなければならない。そのため、各県の暴排条例における措置や罰則は暴対法の影響を受けていることになるが、暴対法の改正に罰則の強化が盛り込まれることになれば、暴排条例における措置や罰則も強化される可能性が高いと考えられるのだ。
福岡県暴排条例の罰則は、暴力団に利益を供与した事業者に対しても向けられている。しかも、暴対法改正案を検討する有識者会議のメンバーに福岡県の暴力団対策担当者が入ったことからすれば、暴排条例の運用強化は避けられまい。暴力団関係者との関わりが、企業運営上の巨大なリスクとなりつつある現状を、改めて認識する必要がある。
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