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青木道生の企業経営戦略講座3-3 : 銀行折衝の在り方 ~毎週水曜更新~
企業経営戦略講座
2011年11月16日 07:00

青木氏の実績と評価は非常に高く、多くの支持を集めている。支援結果はこちら→

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「魔法のように融資を引き出す銀行交渉術」などと書かれたタイトルの書籍を手に取り、私がこれまでに、しっくりと腑に落ちた書籍は、存在しない。銀行融資をアカデミック(学術的)に捉えた書籍は少なく、おおむねすべてが、感情論やテクニカルな手法に終始してしまっている。つまり、銀行格付の仕組みや融資審査の仕組みなど、実務レベルにおいて必要となる根源的知識と情報に、圧倒的に欠けているのである。

 「交渉術」で何とかなるほど、銀行融資は甘くはない。銀行融資において「ウルトラCなど存在しない」という考え方が私のスタンスであるし、「借りられるだけ借りておく」という考え方そのものが、肯定されるべきものではないからである。とくに、自社に対する融資において、「何にいくら必要なのか」を考えず、「当社はいくら借りられるのか」というスタンスで交渉に臨む経営者は、銀行がもっとも融資を行ないたくない対象者なのである。

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 銀行融資において、「魔法の杖は存在せず、転ばぬ先の杖を準備する」という考え方が、私のスタンスである。従前の本稿連載記事において、リレーションシップバンキングとは何か、そしてその実現に向けた具体的取組、銀行格付の仕組みや財務分析上のポイントなどを、強く訴求してきた。かつ、リレバンの実現や融資申込に係る金融機関に対して呈示すべき作成書類の書式を、本ウェブ上にて、開示(ダウンロード)可能としている。

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これらを総合的に勘案すれば、銀行に対する融資の申込時において、「交渉」という表現そのものが適さず、適切な財務と妥当な資金使途、そして各種資料の作成(情報のディスクローズ)をもって、円滑な資金調達を図ることこそが、銀行融資における本来的なプロセスなのである。それを、「交渉」という名の下に、小手先のテクニック論で切り抜けられるほど融資申請は甘いものではなく、また「交渉」という表現を用いれば用いるほど、当該企業における真の理解者・協力者となるべき金融機関を、あたかも敵視してしまうような誤認を生じさせる。

 現在の経済環境の下、売上高の減少が顕著で、固定費の削減が追い付かず、債務超過に陥っている企業は多い。書店に並んでいる書籍を見てみると、「債務超過=破綻懸念先=追加融資は不可能」と解説されているものも多い。それは素人考えであって、現実には、一律にそのような判断が下されることはない。

なぜ、金額の融資が、何のために必要なのか。その融資を行なうことで、何が改善され、どういうゴールが待っているのか。債務超過であるほどの低い収益性と脆弱な安全性にも拘わらず、どのようにして返済を行なうのか。追加融資に際する保全をどう確保するのか。当該融資によって回復されると見込まれる収益性はどの程度のレベルで、したがってB/S上の債務超過は、今後どの程度の期間で解消されるのか―。

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 銀行内部においては、これらの考え方を包括的に含めて、「融資案件の組立(組成)」という。銀行員に求められる能力とは、財務分析能力は当然のことながら、「融資して欲しい」と申出を行なってきた企業経営者の意思を汲み取り、それを「案件」として「組立」できる能力の多寡にあるとも考えている。

 そこには、上記のような「ストーリー性」と、そのストーリー性と経営実務における「整合性」、ストーリー性自体や収益性、資金使途等に係る「妥当性」と、企業・銀行双方にとっての「経済合理性」が必要なのである。私は、この「ストーリー性」と「整合性」、「妥当性」と「経済合理性」こそが、融資申出に係る書類作成時におけるキーワードと考えている。これらはつまり、銀行が企業に融資を行なう際の、審査セクション(保証協会・保証会社など含む)に対する「大義名分」の確保なのである。「融資が難しい」という結果に至る場合の多くのケースにおいては、この「大義名分」に不足があり、または確保できなかったケースが多い。

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 銀行融資に「正攻法」で対峙しようとせず、テクニック論やスキーム論のみで融資申出を行なう行為こそ、もっとも間違った「銀行との付き合い方」である。経営計画の策定と取引銀行との同計画のシェア、そして日常の経営・財務状況の月次でのディスクローズこそ、「情報の非対称性」最小化に向けたプロセスであり、「雨が降っても傘を取り上げられない」環境の醸成につながる。

したがって、銀行融資には「ウルトラC」や「魔法の杖」は存在せず、必要なのは「転ばぬ先の杖」なのである。


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