<TOTO協力企業の事例>
もっとも個々の事例を見ると、問題意識に欠ける事業者が少なくないことも事実だ。
北九州市小倉南区のM製作所は、TOTOの協力会社として発足。すでに40年近い業歴を誇り、現在でも取引の過半数をTOTOが占める。代表のW氏は高い見識を持つことで知られているが、そのW氏がインターネット上で暴力団の利用を公言している事実が、弊社信用調査の過程で明らかになった。発言があったのは、同社のHPからリンクが張られた社長ブログのなかでのこと。タレントの島田紳助氏の引退に関連し、8月24日付で「私個人も借家人が家賃払わず退去もしないので、困っていた時、暴力団関係者を紹介され追い出してもらったことがあります。料金は100万円でした」との記載がなされていた。
この点について弁護士の本田健氏(小倉駅前法律事務所)は、「個人で営む不動産賃貸業の円滑な実施を図るため、暴力団員等に100万円の金員を提供したということであれば、個人事業者として暴排条例に抵触する可能性が高いでしょう。当然、コンプライアンス上の問題があります。また、近年増えている経営者による企業情報の発信のあり方についても、考えさせられる事例でしょう」とのコメントを寄せる。
しかも、中小企業は経営者と企業との結合度合いが非常に強く、今回の件でも会社HPのなかに社長ブログへのリンクが張られて両者は一体的に運営されている。M製作所とW社長の事業とを一体的に捉え、M製作所が暴力団を利用したと見られてもやむを得まい。仮に、発言内容が真実でない場合や、相当昔の話であったような場合でも、官民あげて暴排運動を叫ぶこの時期に、社長の立場で暴力団の利用を容認するがごとき発言は言語道断。従業員の生活を預かる経営者としての危機管理能力を疑わざるを得ない。
また、そのような企業を協力会社として利用するTOTOの管理体制にも、疑問符が付く。9月12日午前、筆者はTOTO総務部を窓口としてTOTOの下請業者管理体制、とくに暴力団排除の取り組みについても質問したところ、「管理は社内規定に従って行なっており、暴力団の利用は容認しない」との返答を得た。ただ、協力会社社長が暴力団の利用を公言する現状は、管理の実効性を持っていないことを推認させる。M製作所の社名を含めた本件事例の説明を行なおうとしたところ、「結構です。社内規定に従ってやります」と言い残し、TOTO側は一方的に電話を切ってしまった。以降、件の社長ブログは1カ月以上経っても変化がない。
先の公言が事実であれば、TOTOは暴力団交際企業から資材を調達して製品を世に送り、間接的に反社会的勢力に資金を供給していることになってしまう。対応が総務窓口であるため事の重大性を理解できるものと思っていたが、総務部の対応は「従業員全体に暴排運動の趣旨が浸透していないのでは」という別の疑念を浮上させる残念な結果となった。
北九州商工会議所の前・会頭を輩出した企業ですらこのような状況のなか、暴排条例の運用強化と旧態依然とした事業者の意識の間にある溝を埋める作業が、今後は必要となってくる。
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