<すかいらーく株の売却損は約220億円か?>
新生すかいらーくの会長兼社長には創業家の横川竟(きわむ)氏が就任。しかし、横川氏の再建計画は軌道に乗らなかった。創業家と筆頭株主である投資会社の対立が表面化。2008年8月、臨時株主総会と取締役会が開かれ、野村プリンシパルが提案した、横川社長の解任と谷真常務の社長就任を決議。野村プリンシパルは500億円の追加増資を行ない、財務基盤を強化。不採算店を閉鎖するなど野村主導で経営再建に取り組んできた。今春、ベインに売却すると見られていたが、3月11日の東日本大震災の発生で、売却は延期されていた。ようやく売却が決まった。
すかいらーくのMBO金額は約3,800億円。ベインの買収総額は約2,600億円。約1,200億円の売却損だ。このうち野村プリンシパルは当初の出資約1,000億円と追加出資の約500億円合わせて約1,500億円を出資。保有株式の売却価額は約1,280億円。単純計算で約220億円の売却損が生じる。野村HDは、すかいらーく株の売却が連結業績への影響について「算定中」としているが、多額の売却損は避けられないだろう。
<ハウステンボスの出資金125億円を放棄>
野村プリンシパルはハウステンボスのM&Aでも多額の売却損を出した。ハウステンボスは「千年の街づくり」をうたい、1992年に開業。「東のディズニーランド、西のハウステンボス」と言われた。だが入場者の減少で、初期投資の負債2,289億円を解消できず、2003年2月会社更生法を申請。同年9月、野村プリンシパルが支援企業に決定した。
野村プリンシパルがテーマパークの再建を手がけるのは初めてだ。同社の川端芳文社長(当時)は、「野村全体では上海のホテルや欧州のリゾートなど類似案件がある。ハウステンボスを上質な滞在型リゾート施設として再建させたい」と、意気込みを語っていた。
韓国や台湾、中国からの来場者に力を入れていたが、2008年の世界金融不況の影響で、海外からの来場者が激減。経営再建が厳しくなり野村プリンシパルは10年3月をもってハウステンボスの支援から手を引いた。
10年4月、旅行業大手エイチ・アイ・エス(HIS)が中心となる新体制に移行。HISの澤田秀雄会長が新社長に就任した。再建計画は、ハウステンボスの親会社である野村プリンシパルが保有する資本金125億円を100%減資し、新たにHISが20億円、九州電力、西部ガス、九電工、西部ガス、九州旅客鉄道、西日本鉄道の5社が計10億円を出資し、資本金15億円、資本準備金15億円で再スタートを切った。HISの傘下に入っての事業再建の初年度に当たる11年9月期の経常利益は15億円の黒字の見込み。ハウステンボスは開業以来、初の黒字化を達成した。
野村プリンシパルはハウステンボスの再建に失敗。無償譲渡した資本金125億円が丸々の損失だ。野村プリンシパルのM&Aは、ハウステンボス、すかいらーくと2連敗である。
(了)
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