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復興最前線~3・11東日本大震災から引き出すべき教訓(1)
未来トレンド分析シリーズ
2011年11月18日 12:00
外務大臣政務官 浜田 和幸

 3月11日に発生した東日本大震災からすでに8カ月が経った。復興に欠かせない予算措置が遅いと言われてきたものの、一次、二次補正の計6兆円に加え、野田政権下で編成された12兆1,000億円の第三次補正予算案がようやく衆議院本会議で賛成多数で可決され、参議院に送られた。今月下旬には、成立する見通しである。

 政府は来たる5年間を「集中復興期間」と位置付け、国・地方の公費分として19兆円程度を想定している。政府の試算では、今回の震災における物的資産の被害総額は、17兆円。よって、今後10年間で23兆円を投入する予定の復興予算は、かなり弾力性をもたせた計画といえよう。

 被災者の生活は依然として厳しいものではあるが、徐々に落ち着きを取り戻している市町村も多くなってきた。当初、47万人が避難生活を余儀なくされていたが、現時点では岩手・宮城・福島三県の仮設住宅入居者以外の避難生活者は8万人以下に。そのうち避難所にとどまっている人の数は8,000人台にまで減少。問題は、沿岸市町村を中心とする膨大な量の災害廃棄物の撤去と高濃度の放射線に汚染された瓦礫の処理が思うように進んでいないことである。

 瓦礫の総量は2,300万トンと推計されている。そのうち仮置き場に撤去された瓦礫の量は1,200万トンほどあり、撤去率は51パーセント。幸い、「災害瓦礫」と呼ばれる居住地周辺の瓦礫に関しては、ほぼ撤去された。こうした災害廃棄物の大半は放射能汚染レベルが1kg当たり10万ベクレル以下のために、従来の焼却施設を活用し、あるいは新規の焼却炉を増設することで確実に処理が進んでいる。

 その一方で、10万ベクレルを超える高濃度の放射性廃棄物に関しては、これまでわが国で処理した経験がないため仮置き場に積み上げられたままになっている。国際的な英知や経験、技術を結集し、環境汚染や健康被害の原因となりかねない放射性汚染瓦礫の処理を速やかに進める必要がある。

 わが国においては、高濃度で少量の放射性廃棄物については、青森県六ケ所村等の施設にて処分してきており、技術的には十分対応は可能である。しかし今回の災害がもたらした膨大な量の廃棄物を適切に対処する方法はいまだ見出せていない。

 実は、これほど広範かつ大量の放射性廃棄物については、海外においても未経験の領域である。放射性物質が原子炉の事故により大量に環境中に放出された事例としては、チェルノブイリの例が唯一あるのみ。とはいえ、チェルノブイリでは今回のわが国のように地震や津波に起因する廃棄物が大量に発生したわけではない。

 また、ほとんど土壌や農地の徐染を行わず、住民を強制的に退避させることにより被ばくを回避しようとしただけであった。その意味では、チェルノブイリをはじめアメリカのスリーマイル島の事故など過去の原発事故対応の事例からは、わが国の3・11大災害に直接的に有益な教訓と言えるものを引き出しにくいといえよう。

(つづく)

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<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務政務官に就任。震災復興に尽力している。

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