NET-IBを運営する弊社(データ・マックス)は、企業の信用調査業務を請け負っている。相談のなかには債権回収に関するものも多く、その際、対象企業の取引金融機関は重要な情報となる。銀行口座の差し押さえが債権回収の一手段として有効だからだ。この情報を元に、債権者は弁護士(会)を通じて金融機関に照会をかけて口座の有無・残高を確定し、裁判を経て口座を差し押さえることになる。
ところで、口座を差し押さえる際、取引金融機関を特定すれば足りるのか、それとも支店名まで特定する必要があるのかについては、近年議論がわかれていた。従来の実務上は、支店名まで特定する必要があるとされており、我々が信用調査を行なう際にも支店名まで調べることになっている。
しかし、いずれの金融機関のシステムもすでに電子化されており、企業名さえわかればどこの支店に口座があるのか、残高はいくらなのかについて、金融機関側はすぐに検索できるのが現状だ。そのため、高裁レベルでは支店の特定までは必要ない(=支店名と口座残高の確定作業は金融機関側の負担)との判断(2011年1月12日、東京高等裁判所第20民事部決定、11年3月30日、東京高等裁判所第12民事部決定を参照)も出されており、議論がわかれていた。
この点につき、最高裁は今年9月、「支店名の特定まで要する」との判断を下し、上記論争に終止符が打たれた。金融機関側の負担を考慮した判断であるが、この結果、実務上も取引金融機関と支店名の特定、さらには口座残高の調査まで債権者側が行なうという従来通りの方式が続けられることになる。
上記判断は、情報管理の厳格化が進められている昨今の状況下、口座の差し押さえを試みる債権者側にとって厳しい内容といえる。また、悪質な詐欺会社の口座を差し押えようにも、情報不足によって非常に難しいのが現状で、先の判断は悪質会社の「逃げ得」を許してしまう側面もある。技術の進歩に合わせた判断、あるいは、実効性ある照会制度の創設が望まれる。
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