「開かれた復興」の理念に基づき、海外の研究所や企業の力も有効に活用し、地域の理解を得ながら安全な処理と最終処理場の確保に努める。この観点でいえば、放射能汚染物質を燃焼させることで体積を減らすことは十分可能となる。現在の技術をもってすれば、100分の1から1,000分の1、場合によっては10,000分の1程度に減容することも不可能ではない。とはいえ、このことは放射性物質を濃縮することと同義であり、濃縮された汚染物質を扱う作業員の被ばく管理や、処理後の減量されたとはいえ濃縮された高濃度の放射性物質の扱いはいっそう困難を伴うものとなるに違いない。言い換えれば、大量の低濃度汚染物質の管理を選ぶのか、少量の高濃度汚染物質の管理を選ぶのか、どちらの方がリスク管理上望ましいかということである。
具体的な廃棄物処理の技術としては、木質廃棄物であれば焼却、コンクリートであれば破砕。コンクリートの場合は、周囲の環境の放射線量とほぼ変わらないため、通常の処分場での処理で問題は少ない。問題は、放射性物質濃度が高くなる木質廃棄物の焼却灰と下水処理に伴い放射性物質が凝縮された形となっている下水汚泥である。
これらの放射性濃度は、環境省の災害廃棄物安全評価検討会で埋め立て処分を認めているが、1kg当たり10万ベクレル以下が対象とされており、それを超えた濃度の高いものに関しては依然として処理方法そのものが検討中となったままである。さらにいえば、放射能汚染物質を焼却するにせよ、溶融するにせよ、埋め立てするにせよ、最終処分場の確保の問題が未解決では処理そのもののプロセスが宙に浮いたままになりかねない。
一方、土壌汚染は技術的に確立した対策がない。しかも土壌は無機質のものを含み、さらに災害廃棄物より大量となるため、焼却炉による減容は非現実的な選択となる。そのため現時点では、土壌を水洗いし、セシウムの大部分を洗浄水に移した上で、洗浄水中のセシウムを沈殿させて取り出すといった方法が検討されている。いずれにせよ、焼却灰や上水下水汚泥の処理、および最終処分場の確保については、国会においても国が責任をもって処理することが決定されたものの、具体的な対策のメドは立っていない。
実は、日本原子力研究開発機構が内閣府の予算事業として「警戒区域、計画的避難区域等における除染モデル実証事業」を打ち出し、1.森林、2.農地、3.宅地、4.大型建造物、5.道路を対象とした技術提案の募集をおこなった。去る10月24日に公募を締め切ったが、300件を超える応募があった。その中から25件が採用され、来年3月末までに実証実験の成果を競うことになっている。東京工業大学、京都大学、宇宙航空研究開発機構、福島県林業研究センターといった研究機関や、新日鉄エンジニアリング、東芝、大林組など民間企業からさまざまな除染、減容化技術の提案が寄せられており、その実験結果が待たれる。とはいえ、これらは各々2,000万円という限られた予算規模での実証実験。高濃度の放射能汚染処理は想定外となっている。
要は、世界的にみて過去に例のない今回の事態に効果的に対処するためには、国内外から有望な技術を見出す一層の努力が欠かせない。そうした経験を重ねることで、大量の廃棄物処理や除染に関し、世界で初となる技術を確立することも可能になるだろう。原子力発電所の建設は日本周辺では継続している。中国や朝鮮半島、ロシア等において原発事故が将来発生する可能性は否定できない。
そうしたリスクを未然に防ぐと同時に、万が一甚大な事故が発生した場合に国際的な緊急対応を行うためにも、日本の果たすべき役割を今回の経験から引き出すことが大切だ。それができれば、わが国は国際社会に対する責任を果たすことになるだろう。禍転じて福となす――そうした発想で、今回の未曽有の危機を乗り越えていく。そんなたくましさが日本には求められている。
≪ (2) |
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務政務官に就任。震災復興に尽力している。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら