FIFA女子ワールドカップで優勝した「なでしこジャパン」。美しく強い「なでしこ」はスポーツ界だけではない。今、閉塞感ただよう福岡経済界において、男性顔負けでバリバリと働くパワフルな女性たちにクローズアップし、毎回ひとりずつ紹介していく。第４回は、福岡市内４カ所で保育園経営を行なう権藤光枝氏。これまでの仕事だけでなく、待機児童をはじめとした社会が抱える子どもに関する問題についても話を伺った。
＜預けたい託児所がない＞
権藤氏は元々美容師で働きながら結婚し、20歳で出産を経験したが、21歳で離婚。これにより小さな子どもを抱えて仕事をしなければならない状況となった。
「美容室は土日祝日が稼ぎ時ですから、休みはありません。午後８時にお店を閉めても、片付けや練習で午後10時、11時の帰宅が当たり前の生活でした。別れた夫の借金も抱えていたため返済もあり、掛け持ちで昼間は美容師、夜はバーで生活のためにがむしゃらに働きました」（権藤氏）
認可保育園は、夕方までしか子どもを預けることができず、仕方なく昼間は認可保育園、夜は託児所でという二重保育をとることとなった。しかし、当時の託児所は、古びたビルで、狭く、暗く、怖いといった印象が強く、安全性や衛生面で非常に不安を感じたという。
もっと行き届いた託児所に預けたいという親心から、もっといい託児所はないかと探してみたが見つからない。子どもと一緒にいる時間も十分には取れなかったこともあり、自分の理想の保育園がつくれたらいいのにとぼんやり思い描くようになったという。子どもとの生活のなかで、保育園開園の希望は強くなり借金完済後も必死に働き、開業資金をため24歳の時に起業した。
＜自身の経験からニーズに答える保育所の設立＞
2000年、福岡市南区横手に24時間保育所「リトルワールド」を開園したが、起業してから軌道に乗るまで大変だったという。
「起業してもしばらく夜の仕事もやめられず、昼間は保育所、夜はアルバイトに行き、帰宅するのはお風呂に入る時ぐらいでした。睡眠も保育園で子供たちが寝ている時に一緒に仮眠したり、夜は静まり返った後に少し寝たりしていましたので、帰宅し十分な睡眠を取ることはできませんでした。自分自身の子どもを育てながらの起業でしたから、忙しかったですね」（権藤氏）
当時の権藤氏のように夜中まで働かなければならないシングルマザーは多い。権藤氏は自らの経験に基づき当初から24時間保育にこだわっている。
「認可外保育所で営業していると、『認可外なのですか？』と聞かれることも多いです。認可を取れば、子どもたちに補助金も出ますから、一人ひとりに良い保育ができるかと思います。しかし、認可を取ろうと思ったことは１度もありません。認可をとると、縛られることになってしまいますから、私が行ないたい24時間保育や、土日祝日あけることが非常に難しくなります。そうなると、私のように働いている人のニーズに答えることができなくなってしまいます」（権藤氏）
リトルワールドには、シングルマザー、シングルファザーといった家庭環境の人も多いという。自分一人でも大変なのにも関わらず、子どもを育てるという責任もあり本当にがむしゃらに働く親御さんの姿は、自身の過去を思い出すといい、最大限バックアップしたいという。
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権藤 光枝（ごんどう みつえ）
（有）Branches代表取締役。1973年兵庫県生まれ。2000年、福岡市南区横手に保育園を開園（現在の井尻園）し、24時間保育所「リトルワールド」園長に。06年箱崎園、08年博多ぎおん園、11年７月、福岡市早良区原に園児教育をすべて英語で行なうリトルワールドイングリッシュハウスを開園し、現在は４園を運営。09年、全国商工会議所女性連合会主催の「第８回女性起業家大賞」で最優秀賞・日本商工会議所会頭賞を受賞。
＜COMPANY INFORMATION＞
■（有）Branches
所在地：福岡市博多区蒲田2-2-23
設 立：2006年３月
資本金：300万円
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