ここ九州にも2カ所、原子力発電所がある。ひとつは九州の北部、佐賀県玄海町にある玄海原子力発電所。もうひとつは九州の南部、鹿児島県川内市にある川内原子力発電所だ。今回のシリーズでは、とくに玄海原子力発電所に絞って、取材を進めていこうと思う。と言うのは、弊社がある福岡市に隣接しているのが同発電所であり、それゆえに地域の状況をイメージしやすく、同時に他地域に比べて住んでいる人、産業構造、重大な施設などが理解しやすいと考えたためである。そのようなシリーズであるから、ここで書かれていることが他地域に当てはまるかどうかはわからないので、そこは、どうかご理解いただきたい。
福岡市は約150万人の市民が生活する九州きっての大都市だ。その福岡市の西側は糸島市、佐賀県唐津市、そして原発のある玄海町と続いている。隣県と言っても、本当に身近に存在しているのである。その玄海町に原子力発電所で1号機が運転を開始したのが1975年である。以後、81年に2号機、94年に3号機、97年に4号機と、次々に増加していった。
これらはいずれも加圧水型軽水炉(以後PWR。Pressurized Water Reactorの略)と呼ばれる方式を採用しており、福島第一原発で採用されている沸騰水型軽水炉(以後BWR。Boiling Water Reactor)とは方式が異なる。低濃縮ウランを用いて発電し、軽水(普通の水)で冷却する点では同じだが、水を沸騰させた際の水蒸気で直にタービンを回すBWRに対して、PWRは核分裂の熱で水を熱し、その水をひとつの回路内(1次冷却)で動かして、もうひとつの回路(2次冷却)で蒸気を起こしてタービンを回す。ウランと接する冷却系を1次冷却系の回路内に封じ込めることで放射性物質の管理をやりやすくしようというもくろみで設計されたものである。
したがって、福島の件がそのまま当てはまるとは言い切れない点には注意が必要である。とくに今回、災害を発生させた福島の原発で使われていた原子炉はマークⅠという、GEが世界で初めて商業用原子炉として売り出したものであり、輸出されるときにはすでに下部の圧力調整室にリスクがあることは指摘されていた。その問題が起こりうるとされた原発とは異なり、現在は玄海原発で使われているのと同じPWRが世界の主流を占めている。ただし、これもBWRとは異なる危険が指摘されている。
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