FIFA女子ワールドカップで優勝した「なでしこジャパン」。美しく強い「なでしこ」はスポーツ界だけではない。今、閉塞感ただよう福岡経済界において、男性顔負けでバリバリと働くパワフルな女性たちにクローズアップし、毎回ひとりずつ紹介していく。第５回は、自身のキャビンアテンダント（CA）の経験を生かし、東京、大阪、福岡、長崎、沖縄の５カ所でエアライン業界を目指す人のための専門校を展開する永江 靜加氏。自身がCAを目指すようになったきっかけ、起業時のエピソード、学生との関係などについても話を伺った。
＜幸せって何だろう？＞
CAとして活躍するなかで、結婚を取るか、仕事をとるかという選択を迫られた永江氏は、結婚を選び寿退社した。これはいわゆる「玉の輿結婚」で、非常に恵まれており、物もお金も沢山あったという。しかし、あとは、結婚生活も時間が経つにつれ、「幸せって何だろう？」という疑問が出てきたという。
「訓練生の時に見た真っ赤な夕日に染まる空を、結婚してもずっと忘れられなかったのです。飛行機が離陸して雲を突っ切っていった先の真っ青な空、真っ白な雲、太陽が燦々と輝いていました。初めて見たキャビンからの空も忘れられません。苦労してなったこともあり、キャビンの中からその光景を見たときは、涙がボロボロ流れてきて、諦めないでよかったと思いました」（永江氏）
結婚生活中も、「この空を他の人にも見せてあげたい！」という気持ちでいた永江氏は、CAを希望している子たちに教えたいという夢を抱いていた。そんな時に、先輩CAと話していると、CA学校を作りたいという夢が一致。これが決定的なものとなり、一気に現実的に動き出した。
当時の永江氏は29歳。バラ色の30代にするためにはこのままでは駄目だと思い、先輩CAと役割分担をし、学校創設を目指し、毎日のように話し合った。
「私たちはお互いに主婦でした。主婦は時間があり、何も制約ない、そのうちと言っている間に、当時はあんな夢がありましたねと振り返る。主婦の夢で終わらせるのが絶対に嫌でした」（永江氏）
当時、経済や経営、商売のことを何も知らなかったため、周囲に話しても、「どうせできるはずがない」と思われ、特に反対はされなかった。しかし、それを二人は、「反対されていないから、やっていいってことですね！」とポジティブに受けとめ、学校を創設するに至った。
＜自分が勝負！＞
永江氏は、何も知らない状態でのスタートで大変だったと当時を振り返える。
「実績も知名度も人脈も資金もない状態で、教育という形のないサービスを提供します。そうなると、「自分自身」を売り込むのが勝負なので、銀行には『私を見てください！！』と言いました」（永江氏）
苦労もしたが、なんとか銀行からの融資も獲得、「我人生飛び込み」と話すほど、仕事も同じように飛び込んで掴んでいった。
しかし、順風満帆とはいかなかった。次から次へと来る難題に「逃げたい」と思い、３度「死」を意識したという。
「『ピンチはチャンス』と言われるように自分がどん底にならなければ、見えない物や、気づかないものもあります。３度目に死のうと思ったときに、『お前は何様のつもりか』という言葉が頭をよぎりました。応援してくれる人は必ずいます。しかし、逃げたいという自分との葛藤がきつかったですね」（永江氏）
「諦めないこと」は、常に成功への第１条件である。壁にぶつかった後には、必ず良いことがある。自身の経験をもとに、「逃げたら負け、あきらめないでほしい」と永江氏は講演などで話している。
＜プロフィール＞
永江 靜加（ながえしずか）
（株）インターナショナルエアアカデミー代表取締役、同校学院長。福岡県出身。1974年全日空入社。CAとしてフライト後、84年CA養成校「インターナショナルエアアカデミー」を創設。世界のエアライン業界志望者の人材育成に力を入れるだけではなく、企業、大学をはじめとした接遇研修、夢、勇気、感動講演、ビジネスセミナー、コンサルタントを行うほか、シンガポール、マレーシア、香港、台湾、上海、北京などで「おもてなし魅力学」研修を行うなど活躍の場を広げている。著書に「感動」「幸せになる魅力学」。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら
