<Egg and Mentaiko Bukkake Udon>
日本人ビジネスマン幹部(会長、社長、役員など)のなかには、留学経験があり、英語力がネイティブクラスと言われる方が少なからずいる。しかし、筆者の経験では、上級者であればあるほど、彼らは、重要な外国人との会議には通訳を使う。母国語でない言語の微妙なニュアンスは難しく、相手に誤解を与え、ビジネスがダメージを受けることをよく知っているからだ。
そして、最も重要な理由は頭の回転が、母国語使用の時と比較すると、どうしても鈍ってしまうからである。
楽天は、外国人が全く出席しない役員会議も英語で行なっていると聞く。役員全員が必ずしも英語が流暢であるわけではないらしい。内容がどの程度のレベルなのかとても興味がある。役員会というのは、最も頭脳を使う経営戦略会議だからだ。
実は、もっと恐ろしいことがある。それは、この会議全体が、一番英語ができる人にマインドコントロールされてしまうからだ。このことは、日本人のメンタリティを考えると容易に想像できる。読者の皆さんも思い当たるはずだ。
"Egg and Mentaiko Bukkake Udon"とは何だろう。これは、楽天の社員食堂のメニューだ。これで、食欲が沸くのだろうか。もし、"卵と明太子のぶっかけうどん"であれば、音の響きだけで、いかにも美味しそうに聞こえる。食べたくなる。
言葉は文化や歴史と切り離すことができない表裏一体の関係にある。横のものを縦に、縦のものを横にして済むものではない。日本の食べ物は、日本語で表示されていないと、美味しそうに感じない。日本文化は日本語を極めた人たちの文化だからだ。
さらに、今回の楽天などの動きは世界情勢にも逆行していると思える。
最近の国際会議では、難しい語彙やネイティブ独特の言い回しを避ける実用主義の英語が主流になりつつある。米国の凋落とBRICSなどの台頭の影響も大きい。
昔から、日本人を除いて、正しい英語や完璧な英語を目指している国民はいない。職業としてその能力が不可欠となる「通訳者」や「学校の先生」などが
完璧な英語を目指すのとは意味が違う。
イギリスの名門イートン校では最近、世界情勢を考え、ラテン語の授業を廃止し、中国語または印度語が選択できるようにした。
<プロフィール>
富士山 太郎(ふじやま たろう)
ヘッドハンター。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。財界、経営団体の会合に300回を超えて参加。各業界に幅広い人脈を持つ。
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