オリンパスの経営問題が一気に動いた。10月に同社の損失隠し問題で不透明な資金の流れを指摘して社長を解任されたマイケル・ウッドフォード氏は11月30日(日本時間12月1日)、自らの取締役辞任を表明するとともに、社長に復帰を目指し委任状争奪戦(プロキシーファイト)を仕掛ける考えを明らかにした。現経営陣の刷新を図るため、来年2月までに臨時株主総会の開催を会社側に求める。オリンパス問題は、新旧の経営トップによる全面対決に発展する可能性が高まった。
委任状争奪戦とは、株主が株主総会において自らの株主提案を可決させるため、他の株主の議決権代理行使を証明する委任状を、経営陣と争奪する多数派工作のこと。英語ではプロキシーファイトという。
臨時株主総会は、議決権ベースで3%以上の株式を最低でも6カ月保有している株主が、取締役に対して招集を求めることができる。約5%を保有する米投資会社サウスイースタン・アセットマネージメント、約4%を持つ英投資ファンドのベイリー・ギフォードといった海外株主は、取締役会のメンバーの早期交代、ウッドフォード氏が復帰して経営再建の陣頭指揮を執ることを求めている。サウスイースタンは1日、「速やかに臨時株主総会の招集を発表すべきだ」との声明を出しており、臨時株主総会は開かれる見通しだ。
ただ、株主総会で取締役を選任するには、決議に参加した議決権の過半数が必要となる。現経営陣に対抗するには、他の株主の支持を集める委任状争奪戦が勝負を決める。
<約半数の株式を保有する国内金融機関>
ウッドフォード氏に勝算はあるか。オリンパスの株主構成は今年3月末時点で、国内の金融機関が49.68%(うち主な3信託口12.48%)、海外の機関投資家が27.70%となっているが、損失問題が発覚後、大株主がオリンパス株を手放す動きが広がった。
筆頭株主だった日本生命保険と、その子会社のニッセイアセットマネジメントは11月17日に変更報告書を提出し、オリンパス株の保有比率は8.18%から5.11%に引き下げたと開示した。三菱UFJフィナンシャル・グループの4社は、11月18日付で提出した大量保有報告(変更報告書)で、4社合算の保有比率は10.0%から7.61%に低下したと開示。第2位の株主である三菱東京UFJ銀行の保有比率は4.90%で変更なかったが、三菱UFJ投資信託は増加、三菱UFJ信託銀行と三菱UFJモルガン・スタンレー証券は減少した。
逆に大幅に保有比率を高めた海外投資家もいる。11月22日付の大量保有報告書によると、米ゴールドマン・サックスのグループ3社が、オリンパス株の6.67%を保有していることが明らかになった。いずれも保有はトレーディング(売買仲介)が目的としている。
大株主が株式の一部を売却する一方、海外の投資ファンドが買い増しを進めるなど株主構成は大きく変化している。49.68%を保有している国内金融機関が経営陣の支持に回れば、勝負はつく。しかし、国内外のファンドや機関投資家が株式を預けている信託口も含まれており、すべてが現経営陣に賛同するとはいえない。
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