<哲学、人類学、愛国心>
楽天やユニクロなどが「社内公用語」を英語にすると発表した時、新聞、雑誌は面白がってこのことを記事にした。いかにも、「グローバル人材」が養成される最先端の会社のような見出しをつけてだ。
「勝てば官軍」は言い古された言葉だ。ところが、昨今は、「勝っている時だけが官軍」と言われる事象がとても多い。ごく最近では、木村剛の日本振興銀行事件などがその典型だ。勝っているときは「時代の寵児」で最後は何と「罪人」の一言だ。マスコミも実に節操がない。
国際人の有るべき姿を探る事は難しい。
米国の名門大学のMIT(スローンスクール)やペンシルバニア大学(ウォートンスクール)の大学院生は卒業旅行でアジア・日本にやって来る。来日した彼らと会食した際、感心した点が3つあった。国際人としてのキャリア形成に役立つヒントも含まれているのでご紹介したい。
(1)両スクールは経営大学院(MBA)だが、彼らの大学時代の専攻は、原子力工学、物理学、化学などでほとんどが理系だ。
⇒理系、文系の発想をバランス良く持つことが重要だ。
(2)経営大学院を卒業した後、さらに留学したりや大学院に残る者も多い。筆者が会ったウォートンスクールの学生は、卒業後はFRBに入ることが決まっていた。そのためには、哲学が必要であると考え、すでにスイスに短期留学を決めていた。彼が、その時点で、日本人の哲学者である鈴木大拙とか岡倉天心の本を読んでいたことにも驚かされた。
⇒哲学、文化人類学などは、社会人としての意思決定に、奥深さを与える。
(3)彼らの会話には、自国・米国への誇りが感じられた。一人よがりでなく、自国の悪い点も十分に認識した上で、会話がとても論理的に組み立てられていた。
⇒自分の立ち位置「愛国心」などを明確にすると、会話にブレがなくなる。
「国際人」が育つことが、日本の将来にとって大事であることは、鎖国でもしない限り変わらない。とても重要な問題だ。日本の多くの有識者が、智慧を出し合うべき事柄だと思う。
最後に
「国際人というのは、"国際的観点"で情勢判断や意思決定ができる人のことです。英語ができる人のことを言うのではありません」
これは、約30年前に「国際人養成」に関する準備委員会に参画されていた西山千先生(アポロの通訳者として有名)の言葉だ。先生(当時SONY顧問)は、大学院まで米国在住、さらに通訳者で日本を代表する、いわゆる「英語の達人」と思われていた方だ。それ故に、この言葉は奥深い意味を持っているのではないかと思う。
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<プロフィール>
富士山 太郎(ふじやま たろう)
ヘッドハンター。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。財界、経営団体の会合に300回を超えて参加。各業界に幅広い人脈を持つ。
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