<三井住友と三菱東京UFJは現経営陣を支援>
オリンパスは11月16日、東京都内のホテルで取引金融機関向けの説明会を開き、支援の継続を求めた。非公開で開かれた説明会には、メガバンクや地銀など約40の金融機関から約100人が出席。報道によると、メーンバンクの三井住友銀行と準メーンの三菱東京UFJ銀行が支援を表明したという。みずほ銀行はすでに、債務者区分を引き下げ、焦げ付きに備えた貸倒引当金の積み増しを明らかにしている。
融資残高は、メーンの三井住友が903億円、準メーンの三菱UFJは信託と合わせた2行で計1,079億円あり、みずほは620億円と少ない。これがメガバンク3行のオリンパスに対する温度差の違いとなって表われた。
それでも金融機関はオリンパスの現経営陣に理解を示している。通常であれば、現経営陣を支持して、ウッドフォード氏の提案を封じ込めることができる。だが、今回は真正面から支持できない。ガバナンス(企業統治)が問題になっているオリンパスの経営陣を支持すれば、欧米の機関投資家たちからはまったく理解されないことがわかっているからだ。
<三井住友が想定している売却先は富士フイルムか?>
ウッドフォード氏のプロキシーファイト宣言に、苦りきっているのがメーンバンクの三井住友だろう。三井住友が描いたオリンパスの再建のシナリオに水を差されたためだ。これまで三井住友は音無しの構えだったが、金融界では、第三者委員会の調査を待って動くと見ている。第三者委員会が、のれん(M&Aの際の取得価額と時価純産の差額)の償却について、どういった結論を出すかが焦点だ。
2013年3月期第1四半期(4~6月)の「のれん」は1,682億円。このうち、英ジャイラスの優先株を取得する際に発生した4億4,300万ドルは、取引自体が架空と見なされて、償却するのは確実だ。のれんの償却に損害賠償請求約2,000億円が加われば、1,511億円しかない純資産は消し飛んで、債務超過に転落する。
債務超過に陥れば、メーンバンクの三井住友の出番だ。6月の株主総会で現経営陣は退陣。三井住友が社長を派遣して、財務内容の改善を務める一方、オリンパスの売却を進める、というシナリオを描く。こう金融界では推測されているのである。
そう、三井住友が三洋電機で取った手法だ。三井住友が親密な関係にあるコールドマン・サックスと組んで三洋電機の経営権を掌握。創業家を追放して、三洋をパナソニックに売却した。これと同じ手法を採るというわけだ。
売却先の最有力候補は、内視鏡もデジタルカメラも手がけている富士フイルムホールディングスである。富士フイルムはもともと、さくら銀行(旧三井銀行)がメーンだったが、住友銀行と合併して三井住友銀行となったため、富士フイルムは三井グループの二木会に新規加盟した。
富士フイルムHDへの売却を視野に入れた再建策のシナリオに、冷水を浴びせられた三井住友がどう動くか。委任状争奪戦をやれば、会社の傷が深まり、双方にメリットはない。ウッドフォード氏を支援する海外の大株主と三井住友など金融機関の話し合いで収拾が図られるという観測が浮上してきた。
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