大阪ダブル選の圧勝劇は、大阪市長に当選した橋下徹前大阪府知事の政治的リーダーとしての資質だけでなく、橋下氏と志を同じくする地域政党・大阪維新の会の組織力に拠るところも大きい。今回、既得権側からの猛烈なネガティブキャンペーンをはね返したのは、その既得権側を離脱し、いわば戦い方を知っている現職議員たちの存在が大きいと見る。
大阪維新の会の市議33名のうち、現職議員で大阪維新の会に加わったのは12名。そのすべてが自民党の市議であった。現在、大阪維新の会大阪市会議員団で副団長を務める辻淳子市議(西成区選出)もそのひとり。しかも、親子3代で自民党の大阪市議を務めてきた、いわゆる世襲議員である。自民党を離れたのは2期目の時。その際、「橋下氏の人気に頼って、選挙に通りたいから抜けた」というウワサが流れ、後援者からも心配されたという。
一見、既得権側の存在と思える辻市議が、あえて大阪維新の会に走ったのはなぜか。辻市議の話からは、既成政党にある、たとえば「1年生議員は何も言うな」といったタテ社会的な体質、与党会派は市長に意見しないといったかつての大政翼賛会を彷彿させる風潮への不満が、背景にあることがうかがえた。
「市長の言うことに反対してはいけないと、当選したときにまず言われました。上の議員から押さえつけがあり、自分のなかにいろいろな想いがあっても前に出せない。そこにいろいろな不満があったと思います。市民の立場から変えていきたいという想いのある人たちが抜けていきました」(辻市議)
有権者にとっては、何期も当選している大ベテラン議員も1年生議員も同じ地方議員である。議員団のなかにタテ社会的な体質が存在することは、『民意』の軽視にほかならない。これは大阪市議会に限ったことではなく、他の地方議会でも見られることであり、任期中に大阪維新の会に移った大阪市議たちと同様の不満を抱えている地方議員は少なくないのではないだろうか。
辻市議によると、大阪維新の会に入る際、「大阪都構想の実現」のほか、「大阪市会議員を半分に減らす」「給与を3割カットする」などの誓約にサインしたという。また、新人候補者の公募は、「議員生活は4年限り」という前提のもとで行なわれた。これは、大阪都構想が実現すれば、従来の府議会、市議会がなくなり、都議会および区議会へと移行するためだ。そして、保身に走らず、大阪の再興から日本の再興へとつなげるという政治理念を共有した大阪維新の会には、誰もが自由に発言できる気風があるという。
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