三井金属鉱業(株)(本社:東京都品川区)の子会社「(株)エム・シー・エス」(本社:山口県下関市)は22日、2013年3月末までに半導体生産事業からの撤退を発表した。大島敬社長は下関市役所で記者会見し、「来年(13年)6月末にも工場の大部分の操業を停止し、従業員の整理を段階的に進める」と、述べた。
同社は1989年、三井金属と同社グループの彦島精錬(下関市)が出資して設立。下関と大牟田(福岡県)の両工場で、液晶ディスプレーと半導体をつなぐテープ状部品の製造を始めた。
生産量は2005年がピークで、世界で50%のシェアを誇ったが、その後半導体業界の世界的な不況から半減したため、今年(11年)3月には大牟田工場の操業を停止していた。
売上高は06年3月期の560億円から、11年3月期には139億円に減少。ピーク時に約3,000人の従業員を抱え下関市では最大の雇用を誇っていたが、12月1日現在、正社員211人、派遣・期間従業員257人の計468人と大幅に減少している。
大島社長は半導体事業からの撤退について、「急激な円高の影響を受けて採算が悪化した。特に韓国製品に押され、今後業界の成長は鈍化が予想されるため」と、説明。
工場は来年6月に全体の3分の2を停止し、13年3月に完全停止させる予定。派遣・期間従業員は段階的に契約を解除し、正社員は可能な限り親会社の三井金属グループへの配置転換で対応するという。なお、会社の清算や、三井金属全体の事業再編は未定としている。
北九州市ではすでに東芝が北九州工場閉鎖を発表しており、山口県内ではシルトロニックジャパン(光市)に続き、今回はエム・シー・エス(下関市)が工場閉鎖を発表。
半導体業界は急激な円高の影響を受けて採算が悪化しており、半導体業界の国内工場の閉鎖は、今後も加速すると見られている。
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