原子力発電の危険を訴え続けてきた研究者、小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)は、事故を起こした福島第一原子力発電所について、今進行している2つの危機を警告した。2月11日佐賀市で開かれた講演会「子どもたちに伝えたい。原発が許されない理由」(未来ネット佐賀ん会主催)で語ったもの。
小出氏が指摘した危機の1つは、圧力容器の底を溶かして落下した溶けた核燃料の問題だ。核燃料は通常、ウランなどを焼き固めた燃料棒になっていて厚さ16センチの鋼鉄製の圧力容器内の炉心に収納されている。
小出氏は、常に冷却が必要だが、今回の事故で冷却ができず、核分裂生成物という「死の灰」を大量に含んだ状態で、発熱をし続けていると指摘。問題は、落下した核燃料が圧力容器の外側の格納容器で止まっているかどうかだ。
「鋼鉄製の格納容器に内張りしてあるコンクリートが、落ちた核燃料を持ちこたえてくれているかもしれない、と東京電力は言っています。しかし、それもよくわかりません。すでにこの底が抜けて地下に出ていっているかもしれない。見ることすらできない。現場に行けない。そしてこんなことが起きると誰も思っていなかったから測定器も何もない。何がどうなっているかわからないまま事故が進行しています」と、小出氏は語った。
もう1つの危機は、原子炉建屋内の使用済み核燃料プール。同プールは格納容器の外側にあり、使用済み核燃料も炉心と同じく発熱を続けていて、常に冷却を続けなければいけない。
小出氏は、2号機以外は同プールが位置する建屋最上階の2階部分が吹き飛び、4号機ではその下の階まで壁が吹き飛んでいると指摘。「使用済み燃料プールが宙吊りのような形で、かろうじてまだ崩れ落ちていないという状態で持ちこたえている」と述べ、東京電力は4号機の使用済み燃料プールの補強工事をしたが、しっかり補強できたか不安だと表明。「大きな余震がもう一度来て、この4号機の使用済み燃料プールが崩れ落ちるようなことになれば、打つ手はない」と警告。「まだまだ途方もない危機が続いている。収束宣言なんてとんでもない」と政府と東京電力を批判した。
また、小出氏は講演で「これから1機の原発事故も起こさせないようにしたいと思います。そのための1番有効な手段は2度と原発を運転させないということだ」と訴えた。
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