<領海警備法の制定を>
海洋基本法ができた背景には、日本の海洋権益がすでに中国や韓国に侵害されているという経緯があった。しかし、海洋基本法には日本が有している海洋権益を活用して海洋国家として発展していく規定が明記されているだけで、日本の海洋権益が外国によって侵害された時の対処については何も規定されていない。いまだに日本の領海や排他的経済水域(EEZ)を守るための具体策は放置されたままなのである。
海上保安庁は現在、「領海侵犯罪」がないために領海侵犯に対しては、「漁業法」や「入管難民法」などで対処している。石川県能登半島沖の日本領海内に北朝鮮の不審船2隻が侵入した際には、漁業法違反容疑で追跡するという苦肉の策を強いられた。尖閣諸島沖での中国漁船の船長に対しては、公務執行妨害容疑での逮捕となった。
一方、海上自衛隊は防衛出動が発令されていない限り、海上保安庁と同じ海上警備行動しか取れない。仮に漁船に偽装した工作船に乗った中国人民解放軍の軍人が尖閣諸島に上陸した場合でも、明らかに外部からの武力攻撃と認定できなければ自衛隊は動けない。
このような行動を未然に防止するためにも新たに領海警備の任務を海上自衛隊に付与するべきである。
米国、英国、中国、ロシア、韓国などの国々ではすでに領海警備に関する体制も法整備も確立されている。日本は遅きに失した感はあるが今からでも遅くない。領海警備の法整備を行ない、海上保安庁と海上自衛隊の連携強化を図り、日本の海の安全と海洋権益を守る体制を構築するべきである。
<海保にようやく捜査・逮捕権付与へ>
平成22(2010)年9月の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件などを受け、ようやく今国会で、海上保安庁法と外国船舶航行法が改正される見込みとなった。
現行の海上保安庁法は、海保の警察権の対象を「海上における犯罪」に限定している。警察が離島に到着するまで時間がかかることから、海保の警察権を拡大することにした。
対象とする離島については、海上保安庁長官と警察庁長官が協議して指定するとしているが、尖閣諸島のほか、日本最東端の南鳥島(東京都)、最南端の沖ノ鳥島(同)などが挙がっている。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、現在、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。 公式HPはコチラ。
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