民政移管がなり、「軍の支配する国」というマイナスイメージを返上したミャンマー。地理的にも交通の要所にあり、中国、タイなどから投資を集めている。最後のフロンティアとも言われるゴールデンランドが、魅力的な資源の国として生まれ変わろうとしている。
<民政移管で一気に経済浮上>
2010年11月、20年ぶりの総選挙が行なわれた。連邦議会が開かれ、11年3月に国軍出身のテイン・セイン大統領による新政権が誕生。1988年の国軍による政権掌握以来となる民主的政権が発足した。民政移管の実現により政治と軍の権力が分割され、ようやく平和的で民主的な国への第一歩を踏み出した。
この動きを見て、88年以降、経済制裁措置を取っていた欧米各国も、経済措置を緩和。政府は政治犯を釈放し、少数民族の武装組織との和平に合意するなど、国際社会との協調路線を歩みつつある。経済発展の機運が一気に高まってきた。
中国では、1985年に鄧小平が先富論を唱え、本格的に改革開放路線を歩み始めた。89年に起こったのが、民主化弾圧の天安門事件。その後、市場経済への移行が成功し、経済は発展した。
ミャンマーでは、民主化弾圧事件が07年に起こった。同様に、経済特区などを設置し、改革開放路線を進む。そのタイミングは似ている。テイン・セイン大統領は、ミャンマーの鄧小平となれるのかどうか。
<天然ガスなど豊富な資源>
ミャンマーは、天然ガス、銅などの資源が豊富で、潜在力は高い。とくに天然ガスは、総輸出額の30~40%を占めており、主力の輸出品として今後も経済をけん引しそうだ。
地理的に近い中国、タイ、インドなどアジア各国をはじめ、欧米が魅力的な市場、投資先と見て進出を加速。軍政から民政への移行でイメージが改善し、これまで縁のなかった欧米、日本からの民間の観光客も増えはじめている。
特筆すべきは、教育水準の高さだ。イギリス統治下にあったことで、識字率が高く、公用語はミャンマー語(ビルマ語)となっているものの、英語でのコミュニケーションが容易。労働力も安価で確保できるため、投資先としてメリットが多く、ASEANのなかでもポスト・ベトナムと注目されている。
先行きの不透明感が解消され、ここ2年ほどで、日本からの進出を計画する企業も急増している。しかし、中国、タイ、韓国に比べると出遅れ感が否めない。巻き返しを図るべく、肉や丸紅など大手商社がこぞって攻勢をかけはじめている。
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