福島第一原発事故による汚染土壌などの中間貯蔵施設建設に関して、26日に行なわれるはずだった建設予定地とされる地元町長らとの意見交換会が中止された。理由は、福島県双葉地方町村会の会長である井戸川克隆双葉町長が、同施設の建設が既定路線であるとの報道を受けて国に不信感を抱いたことによるものと報じられている。
その一方で、細野豪志環境相は同日、意見交換会が行なわれる予定であった郡山市まで足を運んでおり、直前でキャンセル、いわゆる「ドタキャン」をされたかたちだが、細野大臣もまた、同日、福岡県で行なわれる予定であった複数の講演会への出席を「ドタキャン」していることがわかった。
中止された意見交換会を主催した福島県双葉地方町村会によると、政府に同会の話を投げかけたのは2月10日頃。それを受けて環境省の事務局から同町村会へ同月26日開催を希望する旨の連絡が入ったのが同月20日であったという。一方、内閣府へ事実確認をしたところ「環境省から細野大臣側へ、日程が連絡されたのは2月20日であった」と、内容が一致した。
同意見交換会が企画される以前から細野大臣には、26日に福岡県選出の国会議員が実施する地元有権者への報告会や福岡県議会議員の政治資金パーティーなどに出席する予定があった。実際に各会の主催者は、細野大臣が講演する旨の案内を行ない、有権者へ参加を呼びかけていた。細野大臣は、前者に対して横光克彦環境副大臣を代行させ、後者に対しては細野大臣本人のビデオメッセージを送るなどして対応していた。
しかし、各会の関係者によると、細野大臣側から講演中止の連絡が入ったのは開催前日の25日頃であったという。当然ながら、参加希望者に対する連絡は間に合わない。福岡県における講演に関して、細野大臣が「ドタキャン」したかたちと言える。
今、環境大臣として福島の問題を優先することは当然だが、細野大臣の講演が急きょ中止となったことを惜しむ福岡県の有権者は少なくはなかった。国会議員の報告会に集まったのは約1,000名とされ、細野大臣が来ないことを残念がる声があがっていた。一方、福岡県議のパーティーでは、ボランティアのスタッフとして手伝っていた大学生が「細野大臣の話が直接聞けるのを楽しみにしていたので、突然の中止はとても残念」と、肩を落としていた。
一連の経緯は、細野大臣側の連絡ミスの感も否めないが、その一方で福島の汚染土壌問題、中間貯蔵施設の建設が前途多難であることを浮き彫りにした。細野大臣は25日に、福岡の支援者との懇親会も予定しており、すべての予定をキャンセルして臨んだ同意見交換会の中止は痛恨の出来事であっただろう。ただし、有権者に対する説明責任という点では、福島県も福岡県も同等であるべきで、適切な対応が行なわれなければさらなる政治不信を招く原因ともなりかねない。
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