福岡市内と同近郊にパチンコ・スロット店「プラザ」を展開する(株)宣翔物産(本社:福岡市、安部南鎬代表取締役)が、北九州市を中心にしていた同業の(株)キング・オブ・ラッキー(本社:北九州市。以下キング社、新島学代表取締役)の代表者に賃貸している建物の明け渡しを求め、福岡地裁で訴訟が係争中だ。提訴から約4カ月、裁判の中で、キング社は、運営していたパチンコ店を他社に譲渡や賃貸して収入源は不動産賃貸収入のみに落ち込んでいることがわかっていたが、3月5日の口頭弁論では、キング社代理人が民事再生を申し立てたことを明らかにした。
係争中の建物は、福岡市博多区のJR竹下駅に近い博多駅南4丁目にあり、「プラザⅢ」が入居している5階建ての住居・店舗・駐車場の複合商業ビル。総床面積約3,743平方メートル、固定資産評価額は1億9,000万円とみられている。元はキング社所有で、新島学代表らが居住するとともに、店舗部分を宣翔物産に賃貸していたものだった。またキング社が西日本シティ銀行らからの借入担保として同建物に根抵当権を設定していた。
新島代表一家が入居しているのは、2棟構造のビルのうち、「プラザⅢ」とは別棟のビルだ。現地を訪ねると、今も「新島」の表札が掲げられた玄関には、監視カメラ、ダブルロックの重厚なドアが客を拒むように待ち構えている。
右隣の通用口のようなドアが、「プラザⅢ」の社員寮なのとは、対比の妙味とでも言うのだろうか。
建物の貸主・借主の立場の"逆転"は、2006年にさかのぼる。
キング社は事業不振に陥り、同年4月ごろ、銀行等が貸付債権を譲渡する方針となり、競売されると宣翔物産が建物を使用できなくなる恐れが生じた。そこで、宣翔物産はやむなくキング社から買い取ることになったのである。次いで、宣翔物産は、元本31億640万円の貸金債権についても、西日本シティ銀行の債権譲渡人九州債権回収から譲り受けている。宣翔物産とキング社は債務承認弁済契約で、キング社が上記債務のうち11億5,000万円を11年6月末日限り一括返済した場合は、宣翔物産が残金を免除するとした。
こうしてキング社は、債務返済を身軽にし、火の車の資金繰り状態に一息入れたわけだが、困ったのは、同建物に居住していた代表の新島学氏一家の住まいだった。
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