九州電力(以下、九電)が一連のやらせ問題の信頼回復を目的として、14日に福岡市内で開いた「お客さまとの対話の会」に対し、疑問の声があがっている。
同会は、九電が各種団体などに協力を呼びかけ、電気利用者の代表として、市民団体や青年会議所の関係者、大学生などの参加者から、経営陣が意見を聞いたとされている。しかし、一般の入場は不可であり、マスコミを除いて非公開。さらに、NET-IBの取材に対し、九電側は参加者の選定プロセスを明らかにしなかった。
九電広報に参加者について尋ねると「当日、取材に訪れた報道陣にのみ公表するとしか参加者の許可を取っていないためお知らせできない」というコメントが返ってきた。また、どのような基準で参加者を選定したかについても「なるべく幅広い人々に参加してもらうべく声をかけた」と説明するにとどまり、具体的な回答は得られなかった。
玄海原子力発電所の運転差止めを求める訴訟を起こしている「玄海原発プルサーマル裁判の会」の石丸初美代表は、「このような会が開かれるとは一切聞いていなかった。テレビ報道で会場の様子を見たが、参加者に知っている人はいなかった」と、困惑。同じく運転差止めを求め、先月公開質問状を提出した「原発なくそう!九州玄海訴訟」や、九電本店前にテントを構える「原発とめよう!九電本店前ひろば」の青柳行信氏も寝耳に水だったという。
実際に同会に参加した九州大の田北雅裕専任講師は「参加したのは自分を含めて13名。こちら側の質問に瓜生副社長や役員が答える対話形式だった」と、当日の様子を説明。田北氏のように脱原発を訴えた人ばかりではなく、なかには原発の再稼働を積極的に求める参加者もいたという。
電気利用者との対話は、「やらせメール」問題などを検証した第三者委員会が、当時から提言していたものだった。しかし、元第三者委員会委員長の郷原信郎弁護士は取材に対し「説明会を開くなら、少なくとも一般に公開するか、非公開にしても、参加者の氏名や、選定した理由を明らかにしないと意味がない」とコメント。さらに、「市民が支払った電気料金をムダ遣いしている。九電は、こんなにも意味のない会合にカネを使っている場合なのか」と、不快感を示した。
九電は、2012年3月期の決算が1,700億円の赤字になるという見通しを発表したばかり。また、定期検査のため運転を停止している玄海4基、川内2基の原発の再稼働には、安全確認がなされたうえでの、地元の合意が必要とされるが、このような格好だけの「対話の会」が続く限り、電気利用者との溝が埋まるとは到底思えない。
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